途上国の労働者に保護を! 東アジア・大洋州の雇用と幸福で世銀が新報告書

世界銀行は5月8日、最新の報告書「東アジア・大洋州の取組み:雇用、事業、幸福のあり方(仮題 )」を発表した。同報告書は、東アジア・大洋州地域の途上国で起こる急速な経済発展を評価する一方で、適切な労働規制や社会保障の政策の必要性を強調している。

近年、東アジア・大洋州は豊富な労働力を背景に急速な経済成長を達成しており、1990年から2011年にかけて、年平均9%の国内総生産(GDP)成長率を維持してきた。これに伴い、2012年の就業率(15歳以上の人口に占める労働者の割合)は世界最高水準の68%に達した。人々の所得は増加し、貧困削減は大幅に進んだ。絶対的貧困線(1日1.25ドル)以下で暮らす人々の割合は、1990年に比べて半分以下に減少した。

一方で、最低賃金の設定、解雇や派遣労働についてのルール作り、経済移民の促進などの労働市場の整備、失業保険など法制度の適切な施行、社会保障政策の充実には課題が残されている。例えば、タイでは労働者を守る目的で行われた最低賃金の引き上げにより、女性や高齢者が労働市場から追い出されてしまうという事態が起きた。これは引き上げ幅が企業の生産性に見合わなかったためで、生産性が低いとされる労働者層が採算あわせのために解雇された形だ。

労働市場や社会保障制度の不備は雇用に影響を与えるだけではない。国は規制が行き届いていないインフォーマル・セクターの取引に課税を行うことができず、税収が減り、財政は悪化する。また、失業率の増加や賃金格差の拡大は、社会不安を増大させ、暴動などのリスクを増加させる。

報告書は、東アジア・大洋州が持続可能な成長を遂げるために、途上国政府は労働市場の整備だけではなく、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の改善にも力を注ぐべきだと指摘している。ファンダメンタルズには物価の安定、投資や技術革新を促す政策、起業を促す規制緩和などが含まれるが、一部のセクターや企業を優遇していては、市場を歪めて効率的な資源配分を妨げたり、優遇された側とされていない側の社会的対立を招いたりする恐れがある。全ての労働者が恩恵を受けられる社会に向けた政策の立案が必要だ。

また、東アジア・大洋州は農業国、都市化の進む国、島嶼国など多様な経済から成り立っており、画一的なアプローチは適さない。報告書は各途上国を経済の特徴から8つに分類し、それぞれ進むべき方向性を提示している。(鈴木瑞洋)