「何を食べ・買い・着るかの選択が地球を守る」、霊長類学者ジェーン・グドール博士のメッセージ

チンパンジー研究の先駆者として知られる英国の霊長類学者ジェーン・グドール博士が9月9日、米国フロリダ州立サウス・フロリダ大学のイベント施設サンドームで講演する。地球環境を守るために何が必要か、グドール博士は消費者目線で訴えかける。

グドール博士は1960年に、タンザニアの森林保護区の野生チンパンジーの研究を開始。1986年までフィールドで研究を続け、その後は世界各地での講演や執筆など、80歳となった現在でも精力的に活動を続けている。

講演に先立ち、グドール博士は、フロリダ州の日刊紙タンパベイ・タイムズの電話インタビューに答えた。インタビュー内容は同紙の8月25日付記事に掲載された。電話インタビューの内容は以下のとおり。

――9月9日のサンドームでの講演では何を話す予定か。

「人類は急速に地球環境を破壊し、気候変動、水不足などを引き起こしている。人々はもはや何をしても無駄だと感じてしまい、改善に向けた行動をしなくなっている。しかし、日常生活の中で一人ひとりができることはあるということを伝えたい」

――具体的にできることとは何か。

「水や食料を無駄にすることや、公共の交通機関を使える時に車に乗るのをやめることができる。何を食べるか、何を買うか、何を着るか。消費者は、自分の選択が、他の人や動物を苦しめることになっていないかを考える必要がある。

肉や魚を食べることが、地球環境を破壊することにつながる。食べるのを完全にやめることができないなら、食べる量を減らすこと。家畜が発するメタンガスは、二酸化炭素よりはるかに地球環境に悪影響(温室効果)を及ぼしている。そして、抗生物質で育った動物の肉は食べないこと。健康に害をもたらす」

――買うべきではないものを消費者はどのように見分ければよいのか。避けるべき品物や生産国はあるか。

「ここでは具体的に挙げられないが、一般的には、非常に安い食品や衣料品は、正当な賃金の支払いを受けていない労働者の存在を証明していると考えられる」

――博士が望むことを3つ挙げるなら。

「1つ目は、貧困をなくすこと。貧困は大規模な地球環境破壊を招いている。2つ目は、人々が持続不可能なライフスタイルをやめること。無駄な消費はしないこと。そして、3つ目は地球上の人口増加を抑えること。

困難に思えることでも、挑戦し続ける必要がある。政府は企業の経済活動を優先させるので、地球を保護するための法律ができることに期待はできない。そこで、消費者一人ひとりが、何を食べ、何を買い、何を着るかを考えることが重要になってくる」

グドール博士は、9日の講演会場となるフロリダ州タンパの人々が地球環境を守るためにできることの例として、湿地の外来生物の防除や、ハリケーンの被害者の支援などを挙げた。(西森佳奈)