「援助」と「ビジネス」は協働すべき! 国連フォーラムが東京・ニューヨークで合同勉強会

ニューヨーク会場の様子

国連フォーラムはこのほど、「ソーシャルビジネスと国連」をテーマとする勉強会を米ニューヨークと東京を同時中継する形で開催した。これは、国連フォーラムの部会である「国連フォーラム勉強会」(ニューヨーク)と「国連とビジネス」の合同企画。ニューヨーク会場に30人、東京会場に45人が集まった。講師を務めたのは、ニューヨーク側はベルリッツコーポレーションの三木貴穂上席副社長、東京側は政策研究大学院大学(GRIPS)の大野泉教授。

■イノベーションは「味方を増やすこと」から

合同勉強会ではまず、三木氏が「大企業での社会イノベーションの起こし方」について発表した。「ソーシャルイノベーションになぜいま取り組まなければならないのか」「日本の大企業が抱える課題とその対応策は何か」「企業によるソーシャルイノベーションの取り組みへのヒント」について話した。

ソーシャルイノベーションへの企業の取り組みについて三木氏は「事業を通じて(持続可能な形で)社会的課題を解決することが重要」と強調。これ以外のポイントとして、不稼働資産を活用すること、ステークホルダー(利害関係者)とコラボレーションすることが欠かせないと語った。

質疑応答では参加者が「新しいアイデアをトップ層に伝えるにはどうすればいいのか」と質問。これに対して三木氏は「直属の上司がそういう話を受け入れないタイプだとしたら、新しいアイデアに興味を持ちそうな部課長クラスの人を探すこと。アイデアが響きそうな人を巻き込めばいい。社内のビジネスコンテストなどに向けて、アドバイスを求め、社内のネットワークを広げ、芋づる式に味方を増やしていく方法がある」とアドバイスした。

三木氏のプレゼンテーションの後、参加者らは、身の回りで解決したい課題についてグループワークをした。ニューヨーク側の参加者からは「ニューヨークの傘は壊れやすい。レンタル自転車のビジネスを応用する形で、傘のレンタルを事業化できないか」との案が上がった。

■「助けられる側」のニーズを忘れるな

東京からはGRIPSの大野泉教授が、BOP(Base of the Pyramid=年間所得が3000ドル=約30万円未満の貧困層。世界に40億人いるとされる)ビジネスを取り巻く日本企業の動きを解説。BOPビジネスに積極的な企業は、経営層のコミットメントや経営戦略上の位置づけが明確で、社内ベンチャーや戦略的CSR(企業の社会的責任)といった発想をもって取り組む場合が少なくない点を指摘した。

大野泉教授はまた、BOPビジネスの具体例として、味の素の「ガーナ栄養改善プロジェクト」とユーグレナ(東京・文京)の「ユーグレナGENKIプロジェクト」を紹介した。ガーナのプロジェクトで味の素は、ガーナ大学やNGOとパートナーを組み、離乳期のガーナの子どもをターゲットに栄養強化食品を開発した。またユーグレナは、バングラデシュで、給食がない小学校に通う児童にミドリムシ入りクッキーを配布。定期的な健康診断をしながら、バングラデシュの児童の栄養改善を目指している。

グローバル時代の新しい形として、「開発」と「ビジネス」の連携がトレンドになりつつある。これについて大野泉教授は「開発援助とビジネスは協働すべき。ただ、ビジネスの『強み』と『限界』の両方を理解したうえで、開発援助が発揮できる“補完的な貢献”を考えることが重要だ」と訴えかけた。

合同勉強会の最後には、国連事務局人道問題調整部人間の安全保障担当顧問の田瀬和夫氏がコメント。「ビジネスの観点から考えると、どうしてもサプライサイド(援助する側)に意識がいきがちだ。だが、デマンドサイド(助けられる側)の人が何を求め、何を必要としているのか考えることを忘れてはならない。サプライ、デマンド両サイドの一貫性をどう確保していくかが重要ではないか」と指摘した。

(国連フォーラム中尾文恵)