人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は5月16日、「『キラーロボット(殺傷ロボット)』の潜在的な危険性を各国政府は深く認識しつつある。開発される前にキラーロボットを禁止するよう話し合うべきだ」とする声明を発表した。
キラーロボットとは、人間の判断なしでロボット自身が標的を定め、攻撃する兵器。戦場ではまだ使われていないが、今後10~20年内に実現可能といわれる。
キラーロボットの規制の是非を巡っては5月13~16日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で「特定通常兵器使用禁止制限条約」(CCW)の専門家会合が開かれた。87カ国政府や国際機関、NGOなどの代表が出席。キラーロボットを“開発前”に禁止するかどうかが議題に上った。出席者の多くは「標的の設定と攻撃の決定は、人が制御できるようにする必要がある」との考えで一致した。
HRWは、キラーロボットを禁止するCCW議定書が策定されるために、各国が協議すると合意することを求めている。CCW締約国会議が11月14~17日に開かれるが、そこでCCWの枠組みのなかでキラーロボットを規制するための検討プロセスを続けるかどうかが判断される見通しだ。
実戦配備前の段階で禁止措置となった武器は「レーザー兵器」(人の目に向けてレーザーを照射し、網膜に損傷を与える)の例がある。レーザー兵器は失明をもたらすとして、その非人道的さを理由に、禁止を明記した議定書が1995年に採択されている。
HRWは5月12日、CCWの専門家会合に先立って「根底から覆る:キラーロボットが暗示する人権のゆくえ」と題する報告書を発表した。このなかで、キラーロボットの危険性は、紛争時だけでなく、警察活動にも及ぶ点を指摘した。「いかなる使用も許すべきではない。手遅れになる前に禁止する必要がある」とHEWのスティーブ・グース武器局局長は訴えている。
キラーロボットを完ぺきにプログラムするのは至難の業だ。このため民間人を不法に殺すリスクをはらむ。ロボット工学では、ロボットが、人間のように生命を重んじる判断力を備えることは不可能に近いとされる。
またキラーロボットが民間人を殺害した場合、だれが責任を負うのかという問題もある。軍の上官か、製造者か、プログラマーか。いずれにしても現行法で対処することは難しい。「機械に身内を殺された遺族は、法の裁きや補償の機会すら得ることが極めて困難になる」(HRW)
HRWは、世界20カ国以上の51のNGOが参加して2013年4月に発足した「ストップ・キラーロボット」キャンペーンの創設メンバーのひとつ。コーディネーターも務める。(堤環作)