「自白を得るために拷問し続ける」中国の警察、ヒューマン・ライツ・ウォッチが批判

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は5月13日、中国では依然として警察による拷問・虐待が深刻だとする報告書「拷問道具と監房親分:中国の刑事事件被疑者に対する警察の拷問問題」を発表した。拘禁された者に対する人権侵害は減ったと中国政府は主張するが、HRWの今回の報告書はそれに異論を唱えるものだ。

報告書によると、拘禁された者は裁判の前に、「虎椅子」 と呼ばれる拷問道具に何日もつながれたり、手首から吊り下げられたり、「監房親分」(被拘禁者なのに、警察にかわって監房全体を管理する役割を与えられる人)からひどい扱いを受けるという。

HRWのソフィー・リチャードソン中国部長は「警察は犯罪被疑者から自白を得ようと拷問している。裁判所もそうした自白を根拠に有罪判決を下している」と説明する。

報告書の作成にあわせてHRWは、2014年1月1日〜4月30日にオンライン上で公開された約15万8000件の判決文を検証した。この結果わかったのは、432件で被疑者が拷問を訴えていたにもかかわらず、裁判所が証拠を排除したのはその5%の23件のみ。無罪が言い渡された事例はゼロだった。

中国では2009~10年、刑事事件の被疑者に対する警察の残忍な行為が相次いで明らかになった。批判の声を受けて中国政府は、拷問を減らすことを目的に法改正や制度改革を打ち出した。「監房親分」の禁止、取り調べの様子の録画、拷問で得られた証拠を使わない「違法収集排除ルール」も導入した。

ところがHRWによれば、こうした人権保護措置をくぐり抜けるために警察は、被疑者を拘禁施設から別のところに移動させて取り調べたり、目に見える傷を残さない拷問方法を用いたり、といった姑息なやり方を続けている。取り調べ録画の操作・改ざんも日常茶飯事。被疑者を拘禁施設の外で拷問し、施設に戻してから自白の部分のみを撮るといった具合だ。

拷問がはびこる現実についてHRWは「無制限で、また監視なしの被拘禁者へのアクセスを警察に認めていること」「弁護士が取り調べに同席できないこと」「被疑者が黙秘権をもたないこと」などを問題視。この3つを正すと同時に、「警察の人権侵害の申し立てを受理・捜査する独立委員会を設置すること」「裁判所を共産党の支配から外すこと」などを改善策として提案している。

リチャードソン中国部長は「中国は法の支配を重んじている、と習近平国家主席は主張する。だが、次々と出てくる人権侵害の証言を前にすれば、その言葉は到底信じられない」と批判する。