南米屈指の「グルメの国」といえばペルー。料理のおいしさは、ペルー人にとって自慢であり、誇りだ。ペルーは、海岸沿いの「コスタ」、アンデス山脈が続く「シエラ」、ジャングルの「セルバ」と3つの地域に大きく分けられるが、それぞれの地域で料理も異なる。今回は外国人にもペルー人にも人気のあるペルー料理を紹介したい。
代表的な料理が「セビッチェ」だ。これは、生の魚介類をレモンと塩で和えたもの。これにロコトやアヒなどのトウガラシを入れる。魚介のうまみと酸味の相性がばっちり。セビッチェと一口に言っても、魚だけのセビッチェ、海鮮のセビッチェ、多様な具が入ったミックスセビッチェといろんな種類がある。
写真①が、首都リマのレストランで出されるセビッチェ。一番上に乗っている赤い野菜がロコトだ。写真②は、ペルー北部のピウラのセビッチェ。リマではセビッチェと一緒にゆでたチョクロ(トウモロコシ)を食べるが、ピウラでは豆を食べる。ちなみに写真②の後ろに写っているのは海鮮ご飯だ。
次に紹介したいのが「ロモ・サルタード」(写真③)。これは、短冊切りにした牛肉、トマト、たまねぎ、キヌサヤ、ピーマン、フライドポテトをソテーにしたものだ。ペルー各地のレストランで人気のあるメニューとなっている。
ロモ・サルタードと一緒出てくるのが白いご飯。忘れてならないのがソースで、辛いアヒ、甘いもの、レモン味(写真④)などバラエティに富む。好みのソースをかけて食べるが、私のお気に入りはアヒだ。
地方に行くと、その土地それぞれの料理を堪能できる。写真⑤は、ピウラのロンダス・クリオージャス・アル・サボール・カタケンセという料理。この料理は、ピウラにあるカタカオスという場所の地域料理。ユカイモ(キャッサバ)、プラタノ(調理用バナナ)、牛肉、豚肉、鶏肉、とカタカオスの“おいしいところ”をすべて堪能できる。
ペルー料理はどれも炭水化物がたっぷり。カロリーが高いから、私は1年間で4キログラムも太ってしまった。
レストランに行くとランチメニューがあるが、前菜がベイクドポテトの間に、野菜やツナをマヨネーズ和えにしたものがポピュラーだ。メイン料理がご飯、肉に、つけ合わせとしてゆでたジャガイモ、フライドポテト、とうもろこしなどが添えられる。デザートにはアロース・コン・レチェというコメと牛乳のデザートが出たりする。おいしいのでついついすべて食べてしまいたくなる。
国連世界食糧計画(WFP)の仕事で、私は地方でワークショップを開くことがよくある。そこで参加者が一番心待ちにしているのが昼食だ。ワークショップの運営を一緒に担当するペルー人の同僚も「昼食のメニュー選びは一番気を配っている」と話す。その同僚は栄養士なので、栄養のバランスはもちろん、炭酸飲料よりもフレッシュジュースを出してもらえるように、という気配りも忘れない。おいしい食事は仕事へのモチベーションにもつながるのだ。
緊急支援用の食糧のメニューについてペルー政府の関係者と会議をした際に、とても驚いたことがあった。食糧援助といえば、ふつうは油、砂糖、ビスケット、コメ、マメ、少しの加工肉か加工魚というのが基本。管理や配布に手間がかからないからだ。だが政府関係者は「よりおいしいものを提供したい」と意気込んでいた。ロモ・サルタードでももっていくのか、という勢いに、私は思わず苦笑いした。
食にこだわる国ペルー。マチュピチュやナスカなど遺跡は有名だが、おいしい食事もペルーの魅力のひとつなのだ。(由佐泰子)