エチオピア政府は民間のメディアを弾圧している。2015年5月の総選挙を前に、言論の自由は風前の灯火だ――。これは、人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が1月22日に発表した報告書「ジャーナリズムは犯罪ではない:エチオピアでの報道の自由の侵害」の中で明らかになった内容だ。
報告書によると、政府の嫌がらせを受け、2014年に民間の6媒体が廃刊に追い込まれた。また少なくともジャーナリスト・ブロガー・編集者22人が刑事事件で起訴された。30人以上のジャーナリストが逮捕を恐れ、国外に脱出したという。
レスリー・レフコウHRWアフリカ局長代理は「エチオピア政府はメディアを脅威と見なしている。5月の総選挙でメディアは重要な役割を果たす必要があるのに、多くのジャーナリストは、次は自分が投獄されるのではと恐れている」と懸念する。
HRWによれば、政府の批判記事を書いたジャーナリストはまず、治安当局者や与党幹部から電話やSMS、訪問で脅迫される。それでも報道し続けたり、“自己検閲”しない場合は、脅迫がきつくなり、最終的には逮捕される。刑事裁判は被告にとって不公平に進み、テロ関連の容疑で長期刑を宣告されるのがお決まりのパターンだ。
エチオピア政府がターゲットにしているのは紙媒体だけではない。民間ラジオ局は、ニュースを流す前に、政府当局から内容の承認を受ける必要がある。従わないと、身柄を拘束されるケースもある。外国に本拠を置く亡命ラジオ・テレビ局については、政府は放送を妨害。ウェブサイトの閲覧も制限している。外国メディアの取材対象者が脅迫されたり、視聴者が逮捕されることすらあるという。
ソーシャルメディアへの規制も厳しい。亡命エチオピア人が発信するブログやウェブサイトには国内で閲覧できないものが多い。14年4月には、社会や政治についてコメントするブロガー集団「ゾーン9」の6人を逮捕、反テロ法と刑法の違反で起訴するという事件まで起きた。15年1月14日時点で、裁判は16回目の延期となり、6人の拘束期間は8カ月を超えた。
「エチオピア政府はジャーナリストの投獄では世界最悪級となった。不当に投獄された人たちをすぐに釈放し、法改正を通じて報道の自由を守るべきだ」(レフコウ局長代理)
この報告書は13年5月~14年12月に実施した70人以上の現役・元ジャーナリストのヒアリングをもとに作成された。エチオピアでは10年以降、少なくとも60人のジャーナリストが亡命している。