サウジアラビアのボランティアが“高齢者の願いを叶えるキャンペーン”、礼拝からムラーブレッドまで!

サウジアラビアのイスラム教聖地メッカで、“高齢者の願いを叶えるキャンペーン”を地元のボランティアグループが実施した。サウジアラビアの英字紙サウジ・ガゼットが5月1日付記事で取り上げた。

キャンペーンの対象となったのは、メッカ市内の社会福祉施設に入居する64人の高齢男性。願いは「スブハ(お祈りの回数を数えるための数珠)が欲しい」「モスク(イスラム教の礼拝堂)に行きたい」などさまざまだ。

ボランティアが高齢者を車でモスクに連れて行ったところ、礼拝を終え、高齢者の顔は晴れ晴れとしたという。

73歳の男性の願いは「ムラーブレッドが食べたい」。ムラーブレッドとは、小さな石で焼くパンのことだ。メッカでは一昔前の世代がよく食べていた。ムラーとはイスラム教の学者や教師、指導者らへの敬称。

モスクでの礼拝やムラーブレッドを食べるなどの“小さな願い”は叶えられた。しかし叶わなかったものもある。「自宅に帰りたい」「家族に会いたい」「親せきに会いに来てほしい」などだ。ボランティアは「お年寄りを家から追い出した家族に、会いに来るよう強制することはできない」と悩みを打ち明ける。

イスラム教の聖典コーランには、両親を苦しめるような言動はたとえ些細なことであっても慎むように、とある。「だが自分の子どもによって施設に入れられた高齢者は多い。(そうした境遇の)お年寄りたちの笑顔が見たかったので、今回のキャンペーンを企画した」とボランティアは説明する。

世界保健機関(WHO)によると、サウジアラビアの2012年出生時平均余命は男性74歳、女性78歳。人口に占める65歳以上の割合は、2015年の3%から、2030年は7.2%、2050年には18.4%に達する、と国連世界人口推計2012年改訂版は予測している。(西森佳奈)