写真家の吉竹めぐみさんは8月23日、岡山市の市立オリエント美術館で開かれた講演会「シリアの大地に生きる―遊牧民、ベドウィンの暮らし」で、シリア沙漠のベドウィン(アラブ系遊牧民)の暮らしぶりを写真とともに紹介した。このなかで「シリアのことを一般の日本人にもっと知ってもらい、支援の機運を盛り上げたい」と訴えた。
吉竹さんが撮った写真は、ベドウィンが住む沙漠の風景や、イスラム教徒である彼らの“本当の日常生活”。満天の星空、食事やお祈りの様子、薪運びやテント張りなど女性の仕事、男児の割礼、髪を洗った直後のベールで髪を覆っていない女性の姿などだ。
こういった写真を撮影できるコツについて吉竹さんは「シャッターを押す前に、被写体と信頼関係をいかに結べるかが大切」と話す。吉竹さんは1995~2012年、シリア沙漠に毎年通った。そこでベドウィンの同じ一家と約10日間生活をともにしてきたという。ただここ3年は同国の内戦の影響で訪問できていない。
ベドウィンと時間を共有する魅力について「沙漠の自然の美しさ、そしてなによりベドウィンの一家が最大限のおもてなしと心からの思いやりで接してくれることが嬉しい」と吉竹さん。「(2011年1月から続く)紛争が1日も早く終わり、ベドウィンの一家を再訪したい」と紛争終結を願った。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の2014年3月の発表によると、国外に逃れたシリア難民は256万人以上、国内避難民は650万人以上にのぼる。「国際機関の支援は質も量も追い付いていない。まずは世界中の多くの人にシリアの現状を知ってもらい、あきらめずに世論を盛り上げることが大切だ」(吉竹さん)
吉竹さんは中学3年生の時、映画「アラビアのロレンス」が描く沙漠の風景とアラブ世界に魅せられ、アラブを写真で表現したいと写真家を志し始めた。集大成となる写真集「ARAB」(アラブ)が10月、発売される。
岡山市立オリエント美術館では8月31日まで、写真展「文明の十字路シリア―文化遺産とシリアのいま―」を開催中。首都ダマスカス、北部のアレッポ、中部のパルミラなどの街のかつての様子やシリア人の暮らしを写した作品、ヨルダンのザータリ難民キャンプで暮らすシリア難民の写真などが展示されている。(西森佳奈)