セブ農村の託児所の先生と農家の男性、同じ収入でも満足度に違い

カルノト・ポパイさん

フィリピン・セブ市の山間部の農村スドロン2で小作農として働くカルノト・ポパイさんは1日200ペソ(約500円)を農園主から給料として受け取る。月収は6000ペソ(約1万5000円)だ。この額に彼は「満足している。良い給料だ」と語る。

同じ農村の目と鼻の先でセブ市が経営する託児所の先生セシル・へルナンデスさんの月収もカルノトさんと同じ6000ペソ(約1万5000円)だ。カルノトさんとは反対に彼女は「金額に満足していない。少なすぎる」と不満を爆発させる。同じ給料でも、満足度は雲泥の差だ。

カルノトさんは「自分の給料はとても良い。自分のところより低賃金な農村もある」と続けた。66歳の彼は休憩を挟み、1日朝から夕方まで約9時間働く。独身。一度も学校に行ったことがない。「もし自分が教育を受けていたら大工や、この農村のボスになれたかもしれない。しかし学がない自分にとって唯一できる仕事は農業しかない」と肩を落とした。

セシルさんは30分かけてバイクでこの農村まで通勤する。8〜11時の午前のクラスが終われば、違う場所で教えるため移動する。彼女は大学で助産師の勉強をしていた。「看護師や助産師は給料が安定しない。だから自分はその職業に就かなかった」

15歳の長男と12歳の長女を養うためにも、彼女は夫と共働きだ。港で重い荷物を運ぶ仕事をしている夫の月収は1万6000ペソ(約4万円)。セシルさんは自分の収入には満足していないが、こう語る。「私は子どもたちに教えるのが大好きだ。だから私はこの仕事を続ける」

農村は都市のように栄えておらず、お金を使う機会はあまりない。都市ではお金を使う機会が必然的に増える。同じ収入に対する真逆の見解にはこんな背景がある。

さらにカルノトさんは無学、セシルさんは大卒。2人の学歴の差も自分の収入に対する満足度の違いに表れてくる。(影林紫音)