ナイジェリア中部で続く大量殺害、「政府は加害者の捜査・訴追を」とヒューマン・ライツ・ウォッチ

ナイジェリア中部のプラトー、カドゥナ両州で長年続く大量殺害について、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は「(この事態を)ナイジェリア政府は見て見ぬふりをしている。加害者を捜査・訴追すべきだ」と激しく非難する報告書を発表した。

ナイジェリア中部の紛争では2010年以降3000人以上の犠牲者を出してきた。報告書によれば、女性や子どもを含む犠牲者の多くは民族や宗教の違いを理由に、体を切り刻まれ、生きたまま焼かれたり、または銃殺されたという。壮絶な事態が起きているにもかかわらず、ナイジェリア政府は、ほんの一部を除き、加害者らに責任を問うことはなかった。

プラトー州では10年以上にわたって殺害が繰り返されている。2010年には、州都のジョスで、異なる宗教間の衝突が勃発。農村に暮らすフラニ族などのイスラム教徒が虐殺され、それが引き金となって、ベロム族などのキリスト教徒が虐殺される事件が起きた。2010年だけで1000人以上が紛争で命を落とした。

ところがナイジェリア政府はごく最近まで、虐殺の加害者らを法律で罰することをしてこなかった。HRWのダニエル・ベケレアフリカ局長は「目撃者らは犠牲者の一覧表を作り、加害者を特定した。だが何もされない。法の裁きがないため、遺族らは、犠牲者の弔いを暴力に訴えるようになった」と説明する。

カドゥナ州では2011年4月、大統領選の結果を巡って宗教・民族間の争いが激化。数百人以上が殺された。だがHRWによると、被害者のひとりは「やつら(隣人2人を殺した“犯人”)が普通の日常を送る様子を毎日のように見ている。逮捕は1度もなかった」と証言する。同国の連邦・州政府の検察官によれば、一連の殺害事件で訴追された個人は皆無だという。

司法に訴えられない被害者らは苦悩する。このため自らの手で“正義の制裁”を下そうと報復に走る。こうした暴力の連鎖はプラトー、カドゥナ両州でいまも続く。「この連鎖を断ち切るには政府当局は加害者を確実に捜査・訴追し、賠償させる措置を講じるべきだ」とHRWは指摘する。

この報告書は、180人超の目撃者、被害者、警察捜査官、検察官、被告弁護人、判事、共同体指導者らへ聞き取りし、作成した。(堤環作)