女子の教育機会の欠如がDV・児童婚を増やす、世銀が報告書

世界銀行は5月14日、報告書「発言力と行動力:繁栄の共有を目指した女性・女児のエンパワメント(仮題)」を発表。女子の教育機会の欠如が、女性への暴力や児童婚を増やし、さらに、彼女らの子どもたちやコミュニティ全体にも悪影響を及ぼしている、と訴えた。

インドでの集団レイプ事件、ナイジェリアの女子生徒大規模誘拐事件など、ジェンダーに関するさまざまな問題がいま世界中で起きている。報告書は、そうしたジェンダー問題の1つとして児童婚をとりあげ、今後10年で18歳以前に結婚をする女子は世界中で1億4000万人に達すると予測する。

報告書はまた、途上国では女子の5人に1人が18歳までに妊娠を経験していると指摘。さらに、女性への暴力も深刻で、報告書によると、世界で暴力を受けた経験をもつ女性の割合は3人に1人を上回り、数でいえば7億人に達する。

ジェンダー問題の原因としては社会慣習や貧困などが挙げられるが、加えて、女子の低教育問題がある。これについて報告書は、教育水準が低い女性は、自立生活能力に欠けるので生活のために男性へ依存せざるを得ず、それが結果として児童婚へと至る、と指摘する。

同時に、依存状況下の女性たちは、男性による理不尽な暴力に抵抗することが困難で、また強要的なセックスを拒否するのが難しいため、若年妊娠率が増加するという悪循環につながる。実際、教育を全く受けていない女性は、初等教育を受けた女性に比べて11%、中等教育を受けた女性に比べて36%も暴力を受ける割合が高い、という研究結果が報告されている。

女子の低教育や児童婚問題は、本人だけでなく社会全体にも大きな損失をもたらす。例えば、母親の教育レベルと子どもの発育不全の因果関係。エチオピアの事例によると、初等教育と産前ケアを受けた母親をもつ子どもたちは、受けていない母親の子どもたちに比べ、発育不全を起こす傾向が39%低い。同様に、中等教育を修了した母親から生まれた乳児の発育不全は、そうでない母親の乳児に比べて67%低くなるという結果が、ベトナムで出ている。

さらに、国の経済全体への影響。児童婚は、必然的に女性の経済労働機会を狭め、社会の労働力の損失を意味する。ウガンダでは、思春期の妊娠で働けなくなった女子の機会損失は、所得換算で国内総生産(GDP)の30%に達する、との分析もある。

ジム・ヨン・キム世銀総裁は「女性が意思決定に参加でき、機会をとらえられるよう能力を高めることは、女性の暮らしはもとより、われわれが住む世界をさらに向上させるために不可欠だ」と訴えている。(鈴木瑞洋)