水を守るために税制改革を! コスタリカは燃料税でエコツーリズムが盛んに

第7回世界水フォーラムに向けた準備会合の出席者ら(東京・永田町の衆議院第一議員会館)

国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)環境及び持続可能な開発部のチュン・ラエ・クウォン部長は2月20日、都内で開かれた「第7回世界水フォーラムに向けた準備会合~健全な水循環とグリーン経済の実現を目指して~」(主催:特定非営利活動法人日本水フォーラム)で「水資源への投資がグリーン経済の実現には不可欠。そのためには『環境税制改革(ETR)』が必要だ」と強く訴えた。

ETRとは環境税を導入し、それと引き替えに法人税や所得税などを引き下げる税制改革を指す。税収の総額は変わらない。「ETRで“二重の配当”が可能になる」とチュン部長は説明する。二重の配当とは、環境税の導入により、「環境保全」(第1の配当)と「経済成長」(第2の配当)を同時に成し遂げることだ。

ESCAPのモデルシミュレーションは、二重の配当の実現が可能だということを証明している。これによると、1トンの二酸化炭素(CO2)に対して10ドル(約1200円)の炭素税を課し、同時に他の税を引き下げた場合、CO2排出量の削減率と国内総生産(GDP)の成長率はそれぞれ、中国が15.5%と1.9%、マレーシアが7.2%と1.4%、日本でも2.7%と0.2%になる。これは、ETRが機能すれば、CO2の排出量削減とGDPの成長を同時に達成できることを意味する。 CO2の排出削減は水循環の効率を上げる。

チュン部長が引き合いに出したのが、コスタリカの成功例だ。同国の政府は1997年、3.5%の化石燃料税を導入。税収を森林再生プロジェクトに活用したところ、国土に占める森林の割合は1983年の26%から2011年には52%へと拡大した。この結果、エコツーリズムが盛んになり、2009年には観光業が最大の外貨収入源となった。1人当たりのGDPも、1997年の約3500ドル(約41万6900円)から2013年は約1万100ドル(約120万3000円)へとおよそ3倍に増えた。森林の再生は、水資源の保全につながる。

チュン部長は「自然資源の問題は民間だけで解決できない。政府のリードが不可欠。課税政策がなければ、コスタリカでエコツーリズムの成功はなかった」と強調した。また、途上国が中所得国になった途端に経済成長が停滞する状況を指す“中所得国の罠”についても「ETRを進めることで、東南アジアのいくつかの国は中所得国の罠から抜け出せるかもしれない」と述べた。

世界水フォーラムは3年に1度、水をテーマに開かれる世界最大級の国際会議。第7回は4月12日から17日まで、韓国の大邱市と慶州市で開催される。国際機関、各国政府、企業、大学、NGOなどから3万5000人以上が参加する予定。エキスポでは日本政府が「日本パビリオン」を主催する。