国際NGOセーブ・ザ・チルドレンは5月7日、「お母さんにやさしい国ランキング」を含む「母の日レポート2015」を発表した。調査対象179カ国のうち、最下位となったのはソマリアだった。レポートはまた、都市部の保健格差に焦点を当て、5歳までに命を落とす子どもが途上国の都市部に多い実態を改めて示した。
■ワースト10はハイチ以外アフリカ
ソマリア以外のワースト10をみると、169位ハイチとシエラレオネ、171位ギニアビサウ、172位チャド、173位コートジボワール、174位ガンビア、175位ニジェール、176位マリ、177位中央アフリカ、178位コンゴ民主共和国と、ハイチ以外はサブサハラ(サハラ砂漠以南の)アフリカ諸国が独占した。
一方で、トップに輝いたのはノルウェー。以下、フィンランド、アイスランド、デンマーク、スウェーデン、オランダ、スペイン、ドイツ、オーストラリア、ベルギーと、欧州が9カ国を占めた。英国は24位、日本は32位、米国は33位だった。途上国トップ3はベラルーシ(25位)、セルビア(35位)、アルゼンチン(36位)。
このランキングは、「妊産婦死亡の生涯リスク」「5歳未満児の死亡率」「公教育の在籍年数」「国民1人あたりの所得」「女性議員の割合」の5つの指標に基づいて算出されたもの。女性議員の割合が指標のひとつに含まれることについて、セーブ・ザ・チルドレンは「お母さんの健康や教育、また経済的・政治的機会を与えられているかどうかが、子どもの命と生活の質に密接にかかわる」と説明する。
日本の順位が先進国の割に高くないのは、日本の女性議員の割合が11.6%と179カ国中140位と低いため。この数字はソマリアやインドなども下回る。
米国は、女性の妊産婦死亡の生涯リスクが1800人に1人(日本は1万2100人)、5歳未満児の死亡率が1000人当たり6.9人(日本は同2.9人)と、母子保健にかかわる2項目で先進国中最下位。総合順位の足を引っ張った。
■格差がひどいのはルワンダ・カンボジア
母の日レポート2015のテーマは「都市部における保健格差」。レポートによると、5歳未満児の死亡率は、1990年の出生1000人当たり90人から、2013年は同46人へと半減するなど、大きな成果を挙げた。だがその一方で、同じ国の都市の中での格差が広がっているという。
世界人口の54%が現在、都市で暮らす。急激な人口流入で、とりわけ途上国の都市部はインフラ整備が追い付いていないのが現状だ。このため途上国の都市人口の3分の1(8億6000万人)がスラムで生活しているといわれる。スラムでは清潔な水を得られないこともあり、途上国の都市部の貧困層の5歳未満児死亡率は富裕層の2倍以上と高い。
都市部の富裕層と貧困層の間に「最も大きな保健格差」があるとレポートが指摘する10カ国は、ルワンダ、カンボジア、ケニア、ベトナム、ペルー、インド、マダガスカル、ガーナ、バングラデシュ、ナイジェリアだ。
ルワンダとカンボジアでは、都市部の下位20%の貧困層の家庭に生まれた子どもは、上位20%の富裕層の子どもと比べ、5歳までに命を落とす確率が5倍以上も高い。またインドとバングラデシュでは、都市部の裕福な子どもの発育阻害率が15~20%であるのに対し、都市部の貧しい子どもは50~55%とおよそ3倍だ。
だが保健格差を改善させている都市もある。レポートによれば、カンパラ(ウガンダ)、アディスアベバ(エチオピア)、カイロ(エジプト)、グアテマラ市(グアテマラ)、マニラ(フィリピン)、プノンペン(カンボジア)は保健システムを強化し、母子保健への意識を喚起。最貧困層の家庭が手ごろな価格で保健医療サービスを利用できるようにしたという。