フィリピン・セブ市にある新聞社サンスター・パブリッシングは、読者の「参加」を促して、よりメディアに関心を持ってもらうように努めている。
サンスター・パブリッシングは新聞のほか、ウェブを利用してニュースを提供している。スタイルこそ違うが、2つに共通する特徴は、読者の意見を聞くことができるよう工夫されていることだ。新聞の各セクションの上にはメールアドレスが載せてあり、読者の意見をサンスターに送ることができる。
「ブズーコラム」(読者から寄せられたもので、事実または不確かな情報を載せる)という読者が情報源のコーナーでは、彼らを紙面作成の一員としてとらえてい る。ブズーコラムで特に人気があるのは政治家やセレブのスキャンダル。「その類の情報収集に関しては読者のほうが早い時がある」と記者歴20年のミルドリッド・ガラルペさん(43歳)は語る。いち早く新鮮な情報を届けることが必要とされる新聞社にとって、協力的な読者がいるというのは大きな強みになっているようだ。
さらに、「ウェブに載せる記事ではニーズ分析が要になる」と記者歴26年のバッケロ・エアリスさん(55歳)。 新聞とは異なるウェブの読者の心をつかむために、ライターたちは「グーグル・アナリティクス」や「フェイスブック・インサイト」を使って読者の興味につい て情報を集めているそう。「若い世代の人気は芸能ネタに集中しているので、それに関係した情報は常にチェックするようにしている」と分析結果が生かされて いることがわかる。
サンスターはグローバル化する読者にあわせて、さまざまな言語で情報を提供しているが、もっとも読者を「ホット」にさせるのはセブアノ語で書かれた記事だ。 現地の読者にとって、やはりセブアノ語が一番読みやすいらしい。各コラムにはコメント欄が設けられており、読者が意見を投稿できるようになっている。特に セブアノ語で書かれた記事のコメント欄は、10分以内に読者間でディスカッションが始まることもあるというほど参加数が多い。これまでの一方的に情報を発信するメディアとは違い、読者の目線を尊重している「参加型」の方法は好評のようだ。