国際NGOセーブ・ザ・チルドレンは5月6日、「母の日レポート2014」のなかで「お母さんにやさしい国ランキング」(対象178カ国)を発表した。1位はフィンランド、最下位はソマリアだった。ランキングは、「妊産婦死亡の生涯リスク」「5歳未満児の死亡率」「公教育の在籍年数」「国民1人あたりの所得」「女性議員の割合」の5つの指標をもとに、保健・栄養、教育、経済、女性の政治参加を総合的に勘案して算出した。今回が15回目。
■途上国トップはキューバ
お母さんにやさしい国上位10カ国のランキングは下のとおり。
1位、フィンランド
2位、ノルウェー
3位、スウェーデン
4位、アイスランド
5位、オランダ
6位、デンマーク
7位、スペイン
8位、ドイツ
9位、オーストラリア
9位、ベルギー
上位10カ国は、オーストラリアを除き、北欧をはじめとする欧州諸国が独占した。欧州以外の各地域のトップをみると、アジアはシンガポールの15位、中南米はキューバの35位、中東はサウジアラビアの38位、アフリカ大陸はリビアの58位、サブサハラ(サハラ砂漠以南の)アフリカでは南アフリカが75位だった。
日本は32位で、先進7カ国(G7)のなかで最下位。保健・栄養、教育、経済の分野ではトップの国と同じ水準だったが、女性の政治参加の低さが足を引っ張った。女性議員の割合をみると日本は10.8%の低レベル。この数字はフィンランドの42.5%はもとより、最下位ソマリアの13.8%にも及ばない。
これ以外の国では、フランス20位、英国26位、韓国30位、米国31位、中国61位、ロシア62位、ベネズエラ67位、タイ72位、フィジー78位、イラン81位、ジャマイカ91位、ベトナム93位、ドミニカ共和国102位、フィリピン105位、シリア115位、エジプト117位、インド137位など。
下位10カ国は下のとおり。
178位、ソマリア
177位、コンゴ民主共和国
175位、ニジェール
175位、マリ
174位、ギニアビサウ
173位、中央アフリカ
172位、シエラレオネ
171位、ナイジェリア
170位、チャド
169位、コートジボワール
下位10カ国はすべてサブサハラアフリカ諸国。西、中部アフリカが大半を占めた。アフリカ以外で順位が低かったのは、ワースト11位のハイチ(168位)をはじめ、パプアニューギニア(164位)、イエメン(162位)、ミャンマー(157位)、パキスタン(147位)などだ。
■アフガニスタンとエチオピアは改善
このランキングは、富める国と貧しい国のギャップを如実に表している。武力紛争、自然災害、ガバナンスの弱さがマイナス要因となって、ヘルスケアへのアクセスを困難にするからだ。報告書によれば、過去15年でワースト10に入ったことのある28カ国のうち24カ国は近年、武力紛争を経験。また18カ国は自然災害に繰り返し見舞われている。
報告書がまとめた国別の状況を下に抜粋した。
・コンゴ民主共和国、ニジェール、マリ、ギニアビサウなどは、第1回(2000年)以来、ランキングの下位にとどまっている。ギニアビサウ以外の国はすべて、紛争と自然災害の両方を経験している。
・コンゴ民主共和国では、武装した兵士より、女性や子どもの方が命の危険にさらされているとの統計が出ている。
・チャドでは15人に1人の女性が妊産婦死亡の生涯リスクを負う。これに対してスウェーデンでは1万4000人に1人の割合。
・シエラレオネでは5歳未満で亡くなる子どもが5人に1人だが、アイスランドは435人に1人。
・長年の紛争からアフガニスタンのランキングは、2011年は最下位だった。ところが今回は146位にまで順位を上げた。その背景には、助産師の育成、子どもへのワクチン投与、女子教育の推進などの取り組みがある。妊産婦の死亡を2000年と比べて3分の1に減らすことに成功した。
・エチオピアも、妊産婦の死亡を2000年比で3分の1に削減。149位にランクアップし、アフリカ大陸で最も成果を挙げた国となった。
・シリアや中央アフリカなどでは、紛争から逃れるために100万人単位の女性や子どもが国境付近や国外へ避難。不安定な生活を送っている。こうした事情も影響し、とりわけシリアでは、難民の児童婚や強制婚などが増えている。
・米国では、15歳未満の女子が妊娠に起因して死亡する割合が2000年の3700人中1人から今回は2400人中1人とリスクがおよそ倍増した。これはイランやルーマニアと同じ水準。
セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナルのジャスミン・ウィットブレッド事務局長は「『紛争・脆弱国』と『母子の死亡率の高さ』には明確な相関があるように見える。しかしアフガニスタンやエチオピアのように、母子の死亡を減少させることに成功した例もある。人道危機下でも、母子を保護することは可能」とコメントする。
(堤環作)