ベトナムの首都ハノイで一番人気である私立のバンマイ小学校が、教育的に恵まれない子どもたちにより多くの本を読む機会を持ってもらおうと、図書館の建設を推進している。バンマイ小学校の出資で、貧困層や少数民族が利用できる図書館を10年間毎年1カ所ずつ、最終的には10カ所作るというものだ。図書館の名前は「朝日」を意味するバンマイに由来する「モーニングライブラリー」となっている。
2012年と2013年にハノイ市内に1つずつ、2014年にベトナム東北部のサパに1つと、3つの図書館が完成済みだ。もう1つがバクリエウ省に建設中。バンマイ小学校のファ・ティ・トゥ・フウン副校長によると、建設費用は1カ所あたり約2万ドル(約240万円)。単純計算で総額約20万ドル(約2400万円)だ。
バンマイ小学校はハノイ屈指の富裕層が通う学校として知られる。学費は月250ドル(約3万円)。ちなみに日本貿易振興機構(JETRO)の「ベトナム人材力調査2010」によれば、スタッフ職のベトナム人の平均月収は約399ドル(約4万8000円)。これはつまり、バンマイ小学校の学費が平均月収の約6割を占めることを意味する。
バンマイ小学校が図書館事業を始めたのには、ベトナムでこの学校にしかない「ドラえもん図書館」が関係している。ドラえもん図書館は、小学館と提携するベトナムの出版社キム・ドンが約550万円を負担して建てたもの。ベトナム語に翻訳されたドラえもんのまんがや雑誌が置かれている。
フウン副校長は「ドラえもん図書館の設置場所としてバンマイ小学校は選ばれた。今度はこの学校が少数民族や貧困に苦しむ子どものためにと思い、図書館事業を始めた」と、モーニングライブラリーを始めたきっかけを述べた。
国連児童基金(UNICEF)のデータによると、2013年のベトナムの最貧困層20%のうち、子ども用の本を持つ家庭はわずか2.8%。貧しい子どもにとって本とふれあう機会を増やす意義は大きそうだ。