ハリウッド女優がイスラエル企業の宣伝大使に、世界中から非難の嵐

米ハリウッド女優のスカーレット・ヨハンソンさんが国際NGOオックスファムの親善大使を辞任し、イスラエルの家庭向け炭酸水製造器メーカー「ソーダストリーム社」の宣伝大使になった問題で、世界中から批判の声が上がっている。ソーダストリーム社は、ヨルダン川西岸のイスラエル入植地、ミショル・アドゥミーム工業団地に主力工場を置く。このためヨハンソンさんの決断はイスラエルのパレスチナ占領政策に加担するとの見方が大勢だ。

オックスファムは、イスラエル入植地は国際法違反との見解を示している。入植地とのすべての商取引に反対する立場をとる。ヨハンソンさんは2007年から2014年1月まで同団体の親善大使を務めていた。パレスチナのヒップホップグループ「DAM」は3月、ヨハンソンさんを批判する曲を発表し、話題になった。

ソーダストリーム社は日本では2011年秋から、大丸や高島屋などの大手百貨店、ロフト、東急ハンズ、インターネット通販などで製品を売り始めた。だが同社の製品は、世界的なBDS運動(不買、資本引き揚げ、経済制裁)の対象となっている。

日本では、NGO「パレスチナの平和を考える会」が窓口となり、「ストップ!ソーダストリーム」という不買キャンペーンを2012年7月から展開している。ソーダストリーム社の日本国内での販売をストップさせるのが目的だ。

では、なぜソーダストリーム社の製品を買ってはいけないのか。主な理由は以下の通りだ。

1)ソーダストリーム社の主力工場が、国際法に違反するイスラエルの入植地(ミショル・アドゥミーム工業団地)にあるため、製品を購入すると、違法な占領からイスラエルが利益を得ることを許すことになる。

2)ミショル・アドゥミーム工業団地は、パレスチナ人の土地を強制的に収用して作られた。

3)ソーダストリーム社では、パレスチナ人労働者が過酷な条件で働いている。労働時間は1日12時間・週60時間(イスラエルの労働法は、労働時間を1日8時間・週45時間までと定める)。給与の未払いや一方的な解雇もある。

4)工場から出る廃棄物は、パレスチナ人居住区の近くにある投棄場に捨て、周辺住民の住環境を悪化させている。

5)ソーダストリーム社が固定資産税などの税金を納める先は、イスラエル政府に対してであり、パレスチナ自治政府ではない。

一方でイスラエル側は、パレスチナ人を雇用することで、入植地の工場が「共生の懸け橋」になっていると主張する。しかし実際は、パレスチナ人の多くが、入植地でしか仕事を見つけられない状況に追い込まれているのだ。イスラエルにとっては、入植地の工業団地の土地は安く借りることができ、税制上の優遇措置が受けられ、パレスチナ人を雇うことで人件費も抑えられるというメリットがある。

ヨハンソンさんは、ソーダストリーム社の宣伝大使を引き受けたことを「後悔していない」と英オブザーバーの3月16日付記事で語っている。(西森佳奈)