“囚人アーティスト”のチョネさん。フィジーのスパ刑務所に服役中だ
フィジーの首都スバ郊外、約300人を収容するスバ刑務所の向かいに知る人ぞ知る小さな画廊がある。フィジーの国花「タンギモウジア」にちなんで名付けられた「タンギモウジアギャラリー」だ。
画廊に展示された色とりどりの油絵やアートワークは、服役中の囚人の手によるもの。アマチュアの作品ながら、フィジーの自然や人物をモチーフにした作品は素朴で温かみがある。
「決められた労働のほかに毎日3時間はキャンバスに向かう」と語るのは服役2カ月目のチョネさん。スバ刑務所を運営するフィジー更生センターは、画廊がオープンした2008年から、アートを用いた服役囚の社会復帰に力を入れてきた。ニュージーランドから美術の教師を招くなどなかなか本格的だ。
画廊に展示してある作品はすべて売り出し中で、収益の4割を服役囚は受け取れる。「刑務所を出たらアーティストとして人生をやり直したい」。こう言われては素通りするわけにもいかない。私もつい50フィジードル(約3000円)をポケットから出し、油絵の壁掛けを購入してしまった。
「服役囚の多くは窃盗などの軽犯罪で収容される。手に職を付けられれば再犯防止にもつながるというわけさ」。看守のモセセさんはこう話す。再犯防止と更生教育を兼ねたタンギモウジアギャラリーは、フィジー版ソーシャルビジネスにふさわしい。