国連児童基金(UNICEF)と国連教育科学文化機関(UNESCO)統計研究所は1月19日、世界では12~15歳の子どもの2割に当たる約6300万人が教育を受けていないとする報告書「“学校に通えない子どもたちに関する世界イニシアティブ”調査結果~反故にされた約束、『万人のための教育を』を再び」を発表した。
■「より多くの教員・教室・教科書を」は限界
報告書によると、世界では初等教育の学齢期に学校に通えない子どもの割合は11人に1人。だが12~15歳になるとその比率は5人に1人と2倍に上がる。年齢が高くなるほど、学校に入りにくくなり、また中退率が高くなるためだ。
国際社会は、2015年までの目標として「万人のための教育」を掲げている。ところが1億2100万人の子ども・若者が一度も学校に入学したことがないか、中退しているというのが世界の現実だ。この傾向は2007年以降、ほとんど改善されていない。背景には、武力紛争、児童労働、民族性やジェンダー、障がいを理由とする差別などがある。
子どもたちを学校に通わせるにはどうすべきか。UNESCOのイリナ・ボコヴァ事務局長は「『より多くの教員・教室・教科書を』という通常の支援は不十分。教育の機会を奪われている子ども、武力紛争で住む場所を失った家族、家庭に押し込められている女子、障がいのある子ども、働かされている子どもへの支援に焦点を当てることが不可欠だ」と指摘する。
■ポスト2015アジェンダに「中等教育」も
こうした現状を受け、ポスト2015年開発アジェンダには「中等教育」の課題を含める動きが高まっている。
UNICEFのアンソニー・レーク事務局長は「『万人のための教育』を実現するためには、地球規模で『3つの分野』への投資が必要だ」と訴える。一つは、より多くの子どもを初等教育へ就学させること。二つめは、より多くの子ども、とくに女子を中等教育レベルまで学校を中退させないこと。三つめは、就学中に一貫して教育の質を向上させることだ。
■パキスタンの女子の58%は中学に通えない
小学校に通えない子どもの割合が最も高い国は、アフリカ北東部に位置し、1991年にエチオピアから独立を宣言したエリトリアだ。その比率は66%にものぼる。西アフリカのリベリアは59%だ。中学校に目を移すと、パキスタンでは12歳~15歳の女子の58%、男子の49%が通学していない。
学校に通ううえで最大の障壁となっているのは「貧困」だ。ナイジェリアの場合、貧しい家庭の子どもの3分の2は通学していない。このうち9割近くは一度も就学していないと推定される。対照的に、裕福な家庭の子どもで学校に行っていないのは5%。格差は明らかだ。
報告書のなかでUNICEFとUNCESCOは、最も置き去りにされている子どもに教育の機会を届けるための初期投資は大きな利益をもたらすと強調する。「万人のための教育」を叶えるために、未就学児を把握できるデータの収集方法に投資することを求めている。より良い統計があれば、各国の政府やドナー(援助国・機関)が効果的・効率的に教育へ資金を分配できるようになるからだ。