億万長者85人の総資産は世界の下位所得者35億人分に相当する! オックスファムがダボス会議前に「経済格差の拡大」を警鐘

国際NGOオックスファムは1月20日、「少数の利益のために―政治権力と経済格差」と題する報告書を発表し、世界人口の1%の富裕層が世界の富の半分を独占し、とりわけ最富裕層85人の資産総額は、所得でみて世界人口の下位半分の層(約35億人)がもつ資産に匹敵することを明らかにした。

報告書でオックスファムは、先進国、途上国問わず世界では過去に例がないほど格差が拡大している、と指摘。その理由として、多国籍企業や最富裕層が、自らの利益に資するよう政治に働きかけ、経済ルールを操り、民主主義を損なうやり方で富を蓄積している、と説明した。オックスファムはかねて、格差を是正しない限り貧困は解決しない、と主張している。

報告書のポイントは下のとおり。

・世界人口の1%が世界の富の半分を占める。

・世界人口の1%の富裕層が保有する富は110兆ドル(約1京1500兆円)。この金額は、所得でみて世界人口の下位半分の層(約35億人)がもつ富の65倍に相当する。

・世界の再富裕層85人が保有する富は、所得でみて世界人口の下位半分の層がもつ富に匹敵する。

・世界の10人に7人が、過去30年で経済格差が広がった国に住んでいる。

・1980~2012年に、26カ国のうち24カ国で、1%の富裕層が国全体の所得に占める比率を高めた。

・世界の富裕層は、タックスヘイブンを利用して巨額の富を隠し、租税を回避している。申告されていないオフショアの資金は推定21兆ドル(約2200兆円)。

・米国では、長期の金融規制緩和が経済格差を広げる要因となっている。国民総所得に占める高額所得者上位1%の割合は、1930年代の大恐慌以来増え続け、現在は過去最高。

・欧州では、裕福な投資家が金融機関から救済される一方で、中間層や貧困層は緊縮財政の影響で苦しんでいる。

・インドでは、非常に逆進性が高い税制に加え、富裕層と政府の癒着から、過去10年で億万長者の数が10倍に増えた。だが貧困層向けの政府支出は低いまま。

・アフリカでは、特にグローバルな資源採掘企業が納税や特許料の支払いを巧みに回避している。政府に適正に納められていれば貧困対策に使えたはずの資金が、グローバル企業の手元に入っている。

・6カ国(ブラジル、インド、南アフリカ、スペイン、英国、米国)を対象にした調査では、60~80%の人たちが、国の法律が一部の富裕層に都合良く作られていると感じていることがわかった。

経済格差の拡大を懸念するオックスファムは、1月22日に開幕する世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に併せ、各国政府に対して、格差の拡大傾向を早急に是正するよう働きかけていく考えだ。ダボス会議の出席者に対し、「格差是正のための6つの誓約」を宣言するよう求める。

1)累進的な課税を推進し、自らは決して租税回避をしないこと

2)民主的な決定プロセスを無視して自分の富を政治的に利用しないこと

3)自らが実質的所有者となっている会社や信託への投資は全て公表すること

4)自国政府に対し、税収を保健医療、教育、市民の社会保障へ使うよう働きかけること

5)自らが所有または支配している会社に対し、生活賃金を払うよう要求すること

6)経済界の他の有力者に対し、これらの誓約を宣言し守るよう働きかけること
(堤環作)