無電化地域にソーラーランタン10万台提供へ、パナソニックのMDGs貢献

国連ミレニアム開発目標(MDGs)達成期限である2015年が間近に迫る。MDGsは8つの分野で目標を設定しているが、その1つが「開発のためのグロー バル・パートナーシップの推進」。この分野の貢献活動として、パナソニックは、国連機関、NGOと連携し、電気のない地域にソーラーランタン10万台を寄 贈するプロジェクトを進めている。

世界で、電気のない暮らしをしている人は約12 億6000万人で、世界人口の20%近くを占める。電気が使えなければ、夜間の勉強や内職はできず、出産や治療時には大きな危険が伴う。また、暗闇のトイ レや野外排泄では、サソリやヘビに噛まれるリスクや、特に女性では性犯罪の恐怖もある。灯油ランプでは明るさが不十分な上、煙を伴うことから健康被害の心配もある。このような問題を抱える無電化地域において、ソーラーランタンは、日中に太陽電池で発電して充電することによって、安全に明りをもたらすことができる。

このニーズに注目したパナソニックは、創業100周年の2018年を目標に、世界の無電化地域に10万 台のソーラーランタンを寄贈するプロジェクトを進めている。提供されるソーラーランタンは、高さ約14センチと小型ながら、日中6時間充電すれば最長で 90時間も使用することが可能だ。開始時の2013年2月からこれまでに、カンボジアやケニアなどの9カ国、27団体に、2万5500台を寄贈している。主に、発展途上国の学校、医療機関、難民キャンプといった場所にNGOや国連機関を通じて届けられたほか、4000台 は東日本大震災被災地にも贈られた。同社文化グループ事業推進東京リーダーの星亮氏によると、ソーラーランタンの受益者は主に女性と子供。例えば、カンボジアの保健センターでは、提供されたソーラーランタンによって夜間の妊産婦健診が可能になり、昼間は仕事で健診に来られない妊産婦の受診率が上昇したとい う。

パナソニックの寄贈プロジェクトは、ソーラーランタンのビジネス面での展開を含めた包括的なアプローチの一端と見ることができる。同社はすでに、アフリカとアジアの低所得層へ約50ド ル(約5000円)でソーラーランタンを販売しており、今後、100万台の販売で5000万ドル(約50億円)の売り上げを見込むことも可能だ。さらに、 これをきっかけとして新たな商品開発を進めて、アフリカとアジアの新規市場開拓の発展につながることを期待する。また、このソーラーランタンは携帯電話の 充電機能も兼ね備えているので、単なる照明機器のみならず充電機器としてのビジネス展開も視野にいれている。

この寄贈プロジェクトをきっかけに、パナソニックは、国連開発機構(UNDP)が主導する「ビジネス行動要請(BCtA)」に2014年6月より参加し、長期的視点で商業目的と開発目的を同時に達成できるビジネスモデル企業のひとつとして認定されている。

近年ソーシャルインパクト、すなわち社会課題の解決と企業収益の両立を実現させる動きが注目されている。途上国における市場の潜在能力は大きい。企業認知度とともに市場が成長することは、将来における企業の利益につながる。さらに、企業理念に賛同する個人や組織からの投資も見込める。社会貢献度の高い企業が 利益を生み出すという好循環が、MDGs達成にも大きく貢献するだろう。