フィリピン・セブの台所といわれるカルボンマーケット。週末は特に、道路脇を埋め尽くすほどの露店と人で賑わう。マーケットでは10〜20代の若い商人も働く。英語が話せる人もいて、それは教育を受けていることを意味する。若い商人にとってマーケットの仕事は、人生のステップアップの色彩が強いようだ。
カラマンシー(フィリピンで人気の柑橘類の一種)を25個8ペソ(約20円)で売るジュンデル・ティポさん(25歳)は、看護学専攻の大学3年生。彼は毎日ジープニー(フィリピンの乗り合いタクシー)に乗り、片道30分かけてやってくる。平日は午前中働いた後、午後2〜6時は学校へ行き、土日は朝から働く。その理由は「学費を稼ぐため」。ちなみに彼はこの店のオーナーで、カラマンシーの販売価格は、メインストリートと比べて2ペソ安い。
母が経営する八百屋で働き、笑顔で接客するのはジェニファー・アルバランドさん(17歳)。助産師を目指す大学1年生だ。月曜日から木曜日は学校に通い、土日は母と唐辛子やキュウリなどの野菜を売る。物乞いへの対応について「彼らを甘やかしてはいけない」とジェニファーさん。努力抜きの生き方なんてないという彼女の思いがその口調ににじみ出る。
ホテルマンのマイケル・アネーロさん(33歳)は、実はかつて、学費を稼ぐためにカルボンマーケットで仕事していた。「マーケットで働くことに私は良いイメージを持っていない。教育がない人がそこで働き続ける。しかし彼らの収入は1日1000ペソ(約2500円)の時もあり、決して貧しくはない」
フィリピン国家統計局の2013年の調べによると、フィリピンの平均年収は23万5000ペソ(約44万円)。「だがマーケットの人たちはお金の使い方を知らない。学問があれば、彼らはタバコやお酒、女など一時的な娯楽にお金を浪費せず、将来のために貯蓄することを考えるだろう」(マイケルさん)
マイケルさんによると、マーケットで働く人は、日頃の不摂生や不衛生状態から、頭痛や胃痛などの体の不調に常に悩まされるという。確かに、マーケットの下水処理がされていない陥没した道路には、ヘドロのような水たまりができ、異臭を放っていた。(高崎浩子)