「ベナンでは現在、大学の数が増えている」。そう語るのは、西アフリカ・ベナンの最大都市コトヌーにあるアボメカラビ大学で学ぶプリシリア・アモーソさん(25)だ。ベナンでは、大学を卒業しても就職先を見つけられない学生は多い。同大学のフィデル・アメコー教授(32)は「大学に進学するかどうか、若者が迷い始めている」と話す。ベナン経済を発展させるためには大学の数を増やすことではなく、大学の質の向上が重要だと主張する同教授は「マネジメントやインフォマティクスといった実学を学べるカリキュラムを大学に新設すべきだ」と持論を展開する。
ベナンには現在、国立・私立合わせて134の大学がある(ベナンの人口は約1000万人)。この数は近年、増え続けている。これに伴い、大学への進学者数は急激に増加。このため教員、教室の数がともに足りなくなっているのが現状だ。ちなみに日本の大学数は、文部科学省の2015年のデータによると779(日本の人口は約1億2600万人)。
アボメカラビ大学への入学者数は2002~12年の10年間で約2.5倍の6万7453人に増加した。同大学で数学・統計学の一分野であるオペレーションズ・リサーチを教えるアメコー教授は「教員の数が足りない。もっと増やしてほしい」と言う。彼が担当するクラスのひとつの学生数は160人。なかには1000人規模のクラスを受けもつ教授もいる。ベナン政府は、教員不足に陥る大学の状況をふまえ、新たに約100人の大学の先生を雇用する予定だ。また、一部の大学では寄付を募って教室を増やす動きも出ている。
ベナン政府が「大学数・教員数・教室数の不足」をベナンの教育の問題点としてとらえるのに対し、アメコー教授は「大学の教育内容」こそが問題の根源にあると指摘。「大学の教育の質の向上には、『リソースマネジメント』と『インフォマティクス』が必須だ」と力説する。
リソースマネジメントとは、資金や資源の有効的な活用方法を学ぶ学問だ。わかりやすくいえば、自分が生産したものから、効率良く利益を得る方法を見つける能力を養う。インフォマティクスとは、発展する情報技術に乗り遅れないよう、パソコンの操作方法やネットワークの仕組みを中心に学ぶものだ。
「リソースマネジメントとインフォマティクスのカリキュラムを統合した、将来のリーダーを育成するカリキュラムを作りたい」とアメコー教授。いざという時のために、自分の身を自分で守る術を学ぶことは、不安定な経済状況が続くこの国の若者にとっては重要だ。
ベナンの若者にとって深刻な問題は、大学を卒業しても就職が難しいことだ。ベナンの“東大”といわれるアボメカラビ大学を卒業したジコ・ババオデさん(28)は「大学を卒業してすぐに就職できない友人をたくさん見てきた。16人のクラスメートのうちすぐに就職できたのは私1人だけだった」と語る。また、大学教授として学生と日々接するアメコー教授は、大卒者の低い就職率は若者が大学への進学をためらうことにつながる、との懸念を示す。
「教育はすべての開発課題に影響する。教育なしにベナンの発展は期待できない」とアメコー教授。未来のベナン経済を支える若者を育成するために「死ぬまで教師という職を全うしたい」とアメコー教授は力強く話す。