環境問題で暴動を起きたマリパ、エコツーリズムは救世主?!
ここで話を、私が暮らすマリパ(カナイマ国立公園と同じ州で、カウラ川のほとりにある村)に変えよう。この辺りもすごい勢いで自然が失われている。なにしろカウラ川流域だけで年間160平方キロメートルの森林が消えていくのだ。これは霞ヶ浦の面積(168平方キロメートル)にほぼ匹敵する。
理由は単純明快。木を切って売ったり、森を焼いてその後に牧場や畑を作ったりするからだ。その根底にあるのが、いわゆる「貧困」。といってもアフリカのような「飢餓」を指すのではない。定収入がないため、自然を搾取して“生活の足し”にする。
人口わずか3000人のマリパで1年ちょっと前に暴動が起きた。その原因には環境問題が深く絡んでいた。
この村では漁業で生計を立てている人が少なくない。ところがカウラ川では数年前から、5~7月の禁漁期間(厳密には1人1日10キログラムの魚までとれる。ただ手間ひまを考えれば元は取れない)が設けられた。生息数が減りつつある魚を保護するためだが、補償もない漁師にとっては一大事だ。
彼らは挙ってカウラ川の上流に違法を承知で金を掘りに行った。それを政府が強硬に取り締まったため、行き場を失った人たちは怒り狂って市長(マリパはスクレ市)の家やクルマを焼き払ったのだ。
カウラ川流域には世界屈指の自然が残されている。アメリカ合衆国に本部を置く非政府組織「ワイルドライフ・コンサべーション・ソサエティー」(WCS)のスタッフで、観光学を大学で修めたアナ・カルバハルさん(21歳)は言う。
「カウラ川を抱き込むマリパがエコツーリズムの拠点になるチャンスはあると思う。大きな滝、インディヘナの暮らし、川でラフティングやスポーツフィッシングをやったっていいし」
エコツーリズムのすそ野は広い。ガイドやポーターだけの仕事が生まれるのではなく、ベースとなる町の宿、レストラン、バー、商店、交通手段なども繁盛していく。
ただそれらを実現するうえで欠かせないのは、その意識をみんなが共有し、それに向かって行動を起こすこと。そうした“気づき”も環境教育の領域に含まれるのだろう。恵まれた自然を食いつぶすのではなく、サステナブルな使い方を始めたとき、本当の意味でマリパに再び平和が訪れる。(続き)