東日本大震災から2週間、ODA案件を中心に事業展開してきた国内の開発コンサルティング会社が相次いで、被災地の復興支援に乗り出している。ふだんは海外に軸足を置く企業もあるが、この一大事に、これまで途上国で蓄積してきたノウハウを日本でも生かそうとの動きが徐々に広がってきた。
関西電力系の開発コンサルティング会社であるニュージェック(本社:大阪市)はすでに、数十人の土木技術者を被災地に送り込んだ。復興支援の第一歩として、宮崎や岩手、福島各県の道路や港湾がどれぐらいのダメージを受けているのかを調査するためだ。
これは、各県と災害時応援協定を結ぶ「建設コンサルタンツ協会」からの要請を受け、企業の社会的責任(CSR)的な観点から対応したもの。「緊急事態なので、東北支店のスタッフだけでなく、関西からも応援に行っている。派遣場所は刻一刻と変わっている」(同社企画グループ)という。
大日本コンサルタントも、建設コンサルタンツ協会や県庁、国土交通省からの依頼を受け、橋りょうの専門家およそ20人を宮城県気仙沼市などに派遣。同社の強みを生かし、橋の安全性を点検している。こうしたニーズは今後ますます増えることが予想されるが「震災からの復興を使命ととらえ、できる限り頑張っていきたい」(同社経営企画室)。
海外に特化したコンサルティング企業アイ・シー・ネット(本社:さいたま市)はこれまで、多くの途上国で、内戦や天災からの復興支援に協力してきた。寺島裕晃代表は「当社の知見を何かしらの形で生かし、この大震災からの復興に貢献したい。いまその方法を必死に考えているところ」と語る。
コーエイ総研(本社:東京・千代田)も、親会社である日本工営のグループ企業として、復興支援を目的に被災地に人員を派遣すべくスタンバイ中だ。すでに、スケジュールの空いた土木系の技術者数十人をリストアップした。ちなみに同社は今年度の社長表彰を中止し、その賞金を寄付する意向という。
このほか、アジア航測や国際航業ホールディングス、パスコなどの測量会社は、それぞれの企業のホームページで被災地の状況を空撮した写真や地理データを公開。被災者の安全確保や二次災害の抑制に役立ててもらおうとしている。
こうした一連の動きの背景にあるのは「国民の税金を資金源とするODA事業でふだん仕事させてもらっている。今度は私たちが国民に奉仕する番。インドネシア・アチェの津波などからの復興をお手伝いした経験を生かすことができれば」(開発コンサル関係者)との思いだ。
ODA案件を扱う開発コンサルティング企業55社が加盟する「海外コンサルティング企業協会」は3月17日の理事会で、途上国で復興支援を手がけてきた経験を東日本大震災にも生かそうという姿勢で合意した。専門の委員会を設け、今後、具体的にどのような貢献ができるかを議論し、提言書としてまとめていく。