移民労働者による「送金額トップ5」、インド・中国・フィリピン・メキシコ・ナイジェリア

世界銀行は11月20日、「移民と送金に関する報告書」を発表した。このなかで、移民労働者による途上国への2012年の送金額を前年比6.5%増の4060億ドル(約33兆円)へと上方修正した。途上国への送金額は今後も堅調で、増加率は13年7.9%、14年10.1%、15年10.7%と世銀は右上がりを予測している。15年の途上国への送金額は5340億ドル(約44兆円)に達する見通しだ。

12年の送金額を国別にみると、トップはインドの700億ドル(約5兆8000億円)。以下、中国(660億ドル=約5兆4000億円)、フィリピンとメキシコ(それぞれ240億ドル=約2兆円)、ナイジェリア(210億ドル=約1兆7000億円)の順。これ以外では、エジプト、パキスタン、バングラデシュ、ベトナム、レバノンなどが目立つ。

また、11年の送金受け取り額を国内総生産(GDP)比でみると、移民労働者による送金への依存度が最も高いのはタジキスタンの47%。これに、リベリア(31%)、キルギス(29%)、レソト(27%)、モルドバ(23%)、ネパール(22%)、サモア(21%)が続く。

世銀は「送金額は依然として底堅く推移している。貧困世帯にとっての重要な命綱であるだけでなく、送金の仕向け先である多くの貧困国にとっては『安定した外貨収入』となっている」と指摘する。

ただ長引く世界不況で、どこの国・地域に移民労働者を送り込んでいるかによって、送金フローに影響が出ている。

好調なのは、産油国に移民労働者を多く送り出している国・地域だ。たとえば湾岸協力会議(GCC)加盟国への出稼ぎが中心の南アジア、中東・北アフリカ、東アジア、大洋州では、送金額は前回の見通しを上回っている。12年の送金額をみると、南アジアへは前年比12.5%増の1090億ドル(約9兆円)、中東・北アフリカへは同8.4%増の470億ドル(約3兆9000億円)、東アジア・大洋州へは同7.2%増の1140億ドル(約9兆4000億円)だ。

ラテンアメリカ・カリブ海への12年の送金は、米国の景気回復に支えられ、低迷する欧州経済の悪影響をカバー。前年比2.9%増の640億ドル(約5兆3000億円)となる見通し。

対照的に、欧州・中央アジアとサブサハラ(サハラ砂漠以南)アフリカへの送金は、主に欧州の高所得国の不景気から横ばい。12年の送金額は、欧州・中央アジアへは410億ドル(約3兆4000億円)、サブサハラ・アフリカへは310億ドル(約2兆6000億円)にとどまる。

報告書によると、高所得国への送金を含めた世界全体の送金総額は12年で5340億ドル(約44兆円)。15年は6850億ドル(約56兆円)との予測だ。(堤環作)