西アフリカの最貧国のひとつベナンでは、障がい者らが石油を密輸している。11月11日付ガーディアンによると、ベナンの貧困地域で暮らす、ポリオで両足を失った障がい者らは、車いすに乗って隣のナイジェリアへ入国し、安い石油を50リットル缶に入れて購入。車いすを使って見つからないよう石油缶を隠し、ベナンに持ち帰り、売っているという。
ベナン人の子どもで、貧困地区に暮らすある障がい者は「車いすに乗っている僕らを見て、国境警備隊は何も調べない。質問されることもない。だから簡単に国境を行き来できる」と話す。
障がいをもつ密輸業者らは、夜になると、ベナンとナイジェリアの国境を数回往復する。ナイジェリアは世界有数の産油国ということもあって、石油価格は域内で最安レベル。このため、ナイジェリアで買った石油をベナンで売るだけで、大きな差額を稼げるという。3晩で75ドル(約6200円)の収益になる。
ただ障がい者が密輸に手を染めるには明確な理由がある。仕事がないからだ。障がい者らは生きるために密輸業を選ばざるをえないという側面もある。
ベナンの貿易商業省の高官は「ベナン川の国境警備を強化しても、ナイジェリアの石油が破格に安い限り、密輸は続くだろう。ベナン政府は、(正規に輸入した石油にかける税金と比べると)密輸石油によって5000万ユーロ(約53億円)の損失を出している」と説明する。
ベナンは、同じく西アフリカのトーゴと並び、“密輸天国”といわれる。国境警備隊の甘いチェックを背景に、これまでは、ココアや冷凍肉、古着などが主な密輸商品だった。だがここにきて、密輸業者のネットワークは、ナイジェリアの安い石油をターゲットに絞り始めた。
アフリカはさまざまな国が複雑に国境を接している。このため検問をくぐるのはたやすい。アフリカ中部にあるコンゴ盆地では、この地域の交通手段であるコンゴ川のフェリーの料金が障がい者は無料なので、それを悪用し、障がい者らは近隣諸国から商品を密輸して生活費を稼いでいる。(今井ゆき)