ヨルダンやレバノン、イラク、トルコなどにあるシリア人難民キャンプを、湾岸諸国から来たアラブ人男性らが訪れ、“花嫁候補”を物色している。お目当ては、シリアの内戦から逃れてきた女性の難民だ。ジューイッシュプレスやアルバワバ、アラクバールなど、中東地域のメディアが断続的に報じている。
アラブ男性を惹きつけるのは、シリア女性の高い身長、大きな瞳、輝くような素肌、そして「安い値段」だ。シリア女性は「アラブ随一の美女」といわれるが、難民となったシリアの少女はわずかなお金で手に入るという。
シリア難民の親の多くは、16歳の娘を1000ユーロ(約10万円)で売るという。アラブの富豪にとってみれば、1000ユーロははした金。だが難民にしてみれば大金だ。また、娘を早く結婚させることで、不安定な状況から抜け出し、大事な娘を守ってくれる男性が現れたのだと夢を見る。
アラブ富豪との結婚を自ら進んで決意する14~15歳の少女もいる。靴や毛布さえない難民キャンプでは選択の余地がないという問題が背景にある。少女らは、苦しい家計を助けるために親元を離れることで親の負担を軽くしようと考える。
ただ少女の早すぎる結婚は、早すぎる妊娠を招き、初産で子どももろとも命を落とすリスクも低くない。シリア難民キャンプにも、少女たちを早すぎる結婚から守ろうとする人権活動家がいる。「少女たちは、自分を守るすべを知らない。シリアの親たちを教育するだけでなく、“安上がりの花嫁”を買うアラブ人男性への啓発活動も必要だ」と指摘する。
とはいえ、多くの親にとってみれば、家計に大きな不安を抱えているなかで、1000ユーロを払ってくれる男性が現れれば、娘の結婚に同意せざるを得ないのが現実だ。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、特にヨルダンにある難民キャンプが一番狙われているという。「一度両親の元を連れ去られてしまえば、結婚後は買春業に従事させられ、用済みになったら路上に捨てられる」と国連関係者は危惧する。(今井ゆき)