ケニア初のLGBT候補者、上院選から出馬取り下げ

ケニアの上院議員選挙に出馬していた人権活動家デビッド・クリア氏(40歳)が立候補を取り下げた。クリア氏は、「同性愛者」と自ら公言する同国初の立候補者だった。25日付ガーディアンによると、撤退の理由は「身の安全の保証がないこと」と「選挙戦を戦う資金が目標額の4%しか集まらなかったこと」の2つ。

クリア氏の立候補を巡っては、ケニアの現閣僚が「ゲイが政治家になれば、暴動が起きる」と発言したほか、携帯電話にも「お前はこの国に呪いをもたらす」と書かれた脅迫メールが届いたという。キリスト教会もまた、さまざまな形で妨害してきた。

これに対してクリア氏は「LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)が政治に関与すれば、確かに、大規模な反対デモが起こるだろう。その際に標的になるのは、LGBTだけでなく、LGBTを理解する人も含まれる」とコメントしていた。

同性愛への差別が根強いアフリカでは、36カ国が法的に同性愛を禁止している。「LGBTはアフリカ人ではない」と強調する指導者も少なくない。

こうしたなか、クリア氏が一度は出馬を決めただけでも、ケニア社会に与えるインパクトは絶大だ。クリア氏は「LGBTに対する人々の見方が変わった、と私は感じている。政治家になって、LGBTの問題は、『貧困とは違うタイプの社会からの疎外』ということを説明したかった」と無念さをにじませた。(今井ゆき)