外務省は10月6日、「2013年海外邦人援護統計」を同省のホームページに掲載した。これによると、海外で事故・災害、犯罪(加害、被害)などでトラブルに遭遇した日本人を日本の在外公館と財団法人交流協会が助けた数は1万9746人(1万7796件)に上った。前年比3.1%増。過去4番目に多かった。
■援護者の4分の1が「窃盗被害」
最も多くの日本人を援護した在外公館はタイ大使館で1216件。これに、上海総領事館、フランス大使館、フィリピン大使館、英国大使館などが続く。
援護総数を地域別でみると、アジアが全体の3分1以上に相当する6466件(6794人)で最多。以下、北米(5545人)、欧州(4657人)、中南米(1634人)、大洋州(494人)、アフリカ(376人)、中東(246人)の順。前年と比べて援護件数が増えたのは中南米(16.6%増)のみで、他の地域は軒並み減った。
援護件数を要因別にみた場合、全体の4分の1に当たるのが「窃盗被害」(4660人、4400件)だ。これに続くのが、所在調査、遺失・拾得物、疾病、詐欺被害、困窮、犯罪加害、安否照会、強盗被害、事故・災害など。
窃盗だけでなく、すべての犯罪をひっくるめれば犯罪被害で援護されたのは5746人(5353件)。これは援護件数全体の約3割にも上る。断トツに多かった窃盗以外では、詐欺(433人、397件)や強盗(317人、294件)が目立つ。また、殺人などの犯罪で命を落としたのは26人。うち11人がアフリカ(アルジェリアのテロ事件の犠牲者が10人)で、アジアは5人、北米4人、中南米4人、欧州1人、中東1人だった。
一方、犯罪の加害者となって援護されたのは371人(329件)。出入国・査証関係が105人と最も多く、道路交通法違反と傷害・暴行もそれぞれ46人、39人)を数えた。国によっては重罪の「麻薬犯罪」も39人いた。
■アジアで困窮する若者が増加
疾病で援護されたのは807人。うち死亡者は422人。全体の死亡者数は601人で、この約7割が疾病だった。自殺による死亡も62人と約1割を占めた。負傷者数は420人で、過去10年で最少にとどまった。
また、困窮して政府に援護されたのは383人。この7割がアジアだった。年齢別にみると、20~29歳の若者が102人(うち58人がアジア)と4分の1以上を占めた。以下、30~39歳62人、60~69歳56人、19歳以下49人の順。海外、とりわけアジアで困窮する若者が増えている傾向が鮮明となっている。
事故・災害で援護されたのは332人(255件)。この5割以上は交通機関の事故で、交通事故129件、船舶事故5件、航空事故3件、列車事故1件など。水難事故は33件、登山事故は16件だった。
精神障害になって援護された日本人は207人。この4割をアジア、3割が欧州、2割が北米だった。
暴動・政変・テロなどを背景にした援護は、2013年1月にアルジェリア・イナメナスで起きたテロ集団による襲撃事件や、12月のタイ・バンコクでの治安部隊とデモ隊による衝突(日本人カメラマンが取材中に負傷)など。自然災害では、11月にフィリピン中部を襲った台風30号(ハイエン)で被災した日本人もいたが、日本人の死傷者はいなかった。
2013年の海外出国者数は1747万2748人だった。