国際労働機関(ILO)はこのほど、2013年の失業者数は世界で約2億200万人(失業率は6%)に上り、前年から500万人増えたとする年次報告書「世界の雇用情勢2014年版」を発表した。数字が悪化したことについて「世界経済の脆弱な回復は世界の労働市場の改善につながっていない」と問題点を指摘し、約2300万人が職探しを諦め、労働市場から去った可能性を示唆した。
とりわけ深刻なのが若者の就職難だ。報告書によると、若者の失業率は13%超と平均の2倍以上。世界では約7450万人の25歳未満の若者が失業中だという。こうした事情を背景に、途上国では依然、インフォーマルな就業形態がはびこっている。
途上国でかねて問題なのは、1日1人当たり1ドル25セント(約130円)未満で暮らす労働者(ワーキングプア)の多さだ。だがワーキングプアの数が減るペースはここにきて鈍化している。ワーキングプアは世界で2000年代初めには6億人いた。年平均12%のペースで減少し、2013年には3億7500万人と4割近くにまで減少。ところが2013年の減少率はわずか2.7%にとどまるなど、大きくペースダウンした。
こうした状況を懸念して報告書は「労働条件を改善し、社会福祉制度の強化に必要な税収を生むためには、インフォーマルな就業形態から抜け出す労働者を増やすことが極めて重要」との見方を示している。
報告書はまた、2013年の雇用情勢を地域別に解説。中南米・カリブ諸国では雇用の成長が労働力の伸びを上回ったが、東アジアでは労働力の伸びの弱さに同調して雇用成長も弱い状況が続いたという。
東南アジア・太平洋では雇用が1.6%拡大。今後数年は、雇用の伸びが生産年齢人口の伸びを上回る見通しだ。また南アジアの労働市場は、低賃金で保護されていないインフォーマル就業者や農業労働者の割合が高いままとなっている。
中東・北アフリカは、経済成長率が低すぎて、人口増に見合う雇用機会を創出できず、2013年も失業率が世界で最も高い地域だった。サブサハラ(サハラ以南)アフリカは安定した雇用機会が少なく、「脆弱な就業者」の割合が全就業者の77.4%と世界で最も高い。
報告書によれば、2018年までに創出される新たな雇用機会は2億人分。だが求職者数はいまより1300万人以上は増える見通しで、失業者を十分に吸収することは難しい。解決策としてILOは、雇用により優しい政策への転換と勤労所得の引き上げが経済成長と雇用創出を押し上げる可能性がある、と指摘。ILOのガイ・ライダー事務局長は「仕事を創出する企業を支える取り組みが必要」と訴える。(堤環作)