立ち上がるかREDD+、課題は途上国と先進国の「溝」

農林水産省林野庁研究・保全課の赤堀聡之氏

国際緑化推進センターは1月15日、「COP18(気候変動枠組条約第18回締約国会議)等報告会(森林分野)」を都内で開催した。講演した農林水産省林野庁研究・保全課の赤堀聡之氏は「世界では毎年520万ヘクタールの森林が純減している。このほとんどが途上国。途上国の森林を守るために『REDD+』を生かせれば」と述べ、REDD+が制度として早期に立ち上がることを熱望した。

REDD(森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減)とは文字通り、途上国の森林伐採・劣化を食い止め、温室効果ガスの排出量を減らすための枠組みだ。植林や森林保護を促すことで、森林破壊と地球温暖化の2つを防止するのが目的。

REDD+は、REDDに炭素ストックの考えをプラスしたもの。途上国が取り組む森林保護や二酸化炭素(CO2)削減の活動に対して、先進国が資金援助や技術移転をするのがミソだ。これによって途上国で削減された炭素量を、先進国はクレジットとしてカウントできる。

ただREDD+はまだ、制度として立ち上がっていない。COPでは、REDD+を気候変動枠組条約(UNFCCC)のなかにどう組み込むかを巡り、これまで議論が続いてきた。だが先進国と途上国の主張は、温室効果ガスの削減量の評価方法について真っ向から対立している。先進国側が「第三者機関による評価」を求めるのに対して、途上国側は「自国で評価」する方法を提案している。

途上国は、第三者評価の導入は評価基準が厳しくなるとして、目標達成が難しくなりかねないと懸念する。一方で、先進国にとってみれば、第三者機関により保障されたクレジットでないと、安心して資金を投入できない。

赤堀氏は「いまは途上国と先進国の間で意見が割れ、REDD+の枠組みの策定が進まない。しかし、枠組みがないから現場が動けないではなく、むしろ枠組みの策定に必要なのは、現場の活動からの経験・知見のフィードバックだ」と、途上国での植林・森林保全活動を継続する大切さを指摘した。

世界で最も森林を失っているのは、アマゾンを擁するブラジル。その面積は年間264万ヘクタールに上る。九州の面積が367万ヘクタールといえば、その広大さがわかる。森林が失われる主な要因は、人口増や都市開発、幹線道路工事のための森林伐採などだ。(依岡意人)