世界で拡大する貧富の差、「金持ちに有利な仕組みの見直しを」とオックスファム

「貧富の差は世界中で極端に拡大している。貧困削減を妨げている」。国際NGOのオックスファムは1月19日、1月23~27日に開かれるダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)を前に、現状に警鐘を鳴らす声明を発表した。

オックスファムの報告書「不平等の代償:なぜ極端な富と貧困は世界中の人々に負の影響をもたらすのか」によると、世界で最も裕福な100人の2012年の総収入は2400億ドル(約21兆6000億円)に達する。これは、世界の極度の貧困を終わらせるために必要な額の4倍にも相当するという。言い換えれば、貧富の差を是正さえすれば、地球上から貧困をなくすことは十分可能だ。

世界で最も裕福な1%の層は、20年前と比べて収入が6割増えている。その半面、残り99%の人、とりわけ貧しさの底辺にいる人たちの生活は苦しさを増すばかり。ここ数年の金融危機が、富裕層への富の集中に拍車をかけているという事実がある。

オックスファムのバーバラ・ストッキング事務局長は「少数の人に富を集中させてでも経済発展さえすれば、いずれ多くの人たちに裨益する、との考えは改めるべきだ。明らかに逆のことが起こっている」と、極端な富の集中を軽減させる必要性を強く訴える。

「土地や水などの基本的な資源でさえ貴重になりつつある世界で、少数の人に資源を集中させ、大多数の人たちが残りを奪い合うという現状はとうてい容認できない」

世界のリーダーが学ぶべき成功例としてオックスファムが挙げるのは、不平等を軽減しながら急速な経済成長を遂げたブラジルと、既得権益に切り込んで不平等を減らした1930年代のルーズベルト元米大統領のニューディール政策だ。ルーズベルト元大統領は「米国が勝ち取った政治的平等は、経済的な不平等の前では何の意味もなさない」と断じたといわれる。

ストッキング事務局長は「まずは1990年の水準にまで不平等を軽減することを、世界のリーダーたちは約束すべき」と指摘。「タックスヘイブンや実行力に乏しい労働法規など、グローバル経済のシステムは、富裕層に有利なように作られている。世界のリーダーたちは、このシステムを見直すべきだ」と注文を付けた。

世界の富の約3分の1に当たる32兆ドル(約2880兆円)が集まるタックスヘイブンを閉鎖すれば、1890億ドル(約17兆円)の税収が見込めるとの試算もある。

“新ニューディール政策”としてオックスファムが提唱するのは下の4点。

1)税の「逆進化」傾向を世界的に反転させる

2)法人税について「グローバルな最低税率」を設定する

3)資本収益に対する「賃金比率」の向上策を実施する

4)無償の公共サービスや社会セーフティネットへの投資を増やす