リベリアの首都モンロビアで開かれた、2015年以降の国際的な開発枠組み(ポスト・ミレニアム開発目標=ポストMDGs)について話し合う「国連ハイレベルパネル」会合で、国際NGOオックスファムは「税収の“穴”を埋めれば、世界の飢餓を終わらせることができる。タックスヘイブンのような、脱税を合法化する抜け道は塞ぐべきだ」との意見を表明した。
タックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)の報告書によると、タックスヘイブンには全世界で32兆ドル(約2880兆円)のお金が集まっている。これに、たとえば0.6%の税率をかけると、毎年1890億ドル(約17兆円)を税金として徴収することが可能になる。この4分の1弱に当たる502億ドル(約4兆6000億円)を毎年、効果的な政策と組み合わせ、追加資金として飢餓対策に投入すれば、世界の飢餓にピリオドを打てる、というのがオックスファムの主張だ。
リベリアを例にとっても、2001~10年に不法に流出した資金は推定1兆110億~1兆830億ドル(93兆~99兆円)。過去10年にわたって毎年約10億ドル(約910億円)の税金を喪失している計算になるが、この金額は、リベリアが受け取る開発援助額の2倍に相当する。同国の2011年の国内総生産(GDP)の3分の2でもある。
オックスファムでアドボカシー(政策提言)を担当するスティーブン・ヘイル氏は「2025年までに世界の飢餓を終わらせる、と各国政府は合意すべきだ。タックスヘイブンの廃止は、この目的を達成しても、資金は有り余るほど。脱税が飢餓を継続させている、といっても過言ではない」と警鐘を鳴らす。
国際社会はこれまで、MDGsの達成に向けて努力を重ね、極度の貧困の克服、児童死亡率の低下、初等教育の完全普及、HIV・エイズの拡大防止など、大きな成果を遂げてきた。だが2008年に起きたリーマンショック以来の経済危機や、途上国にとっては「不公平な貿易ルール」の押し付けにつながる経済のグローバル化などが足かせとなって、前進の流れは停滞しつつあるのが現状だ。
リベリアの2007年の最新データをみても、リベリア国民のほぼ10人に9人はいまだに1日1.25ドル(約92円)未満で暮らしている。栄養不足に直面するのは3人に1人に上る。
オックスファムは、ポストMDGsの新たな開発枠組みには「貧困の終焉」「不平等の是正」「世界の有限な資源の公平な配分に対する強力なコミットメント」を盛り込み、途上国のみならず、すべての国の行動変容を必要とする普遍的な目標を立てるべき、と指摘。その策定プロセスでは市民社会と途上国の声が反映されるよう求めている。
「重要なのは、言葉ではなく、行動だ。MDGsの期限までまだ1000日ある。今夜も、約10億人が空腹のまま眠りにつく。世界の指導者らに対する信頼は、ポストMDGsの策定ではなく、どんな行動をいまとるかによって決まる」(ヘイル氏)
国連ハイレベルパネルの共同議長は、インドネシアのユドヨノ大統領、リベリアのエレン・サーリーフ大統領、英国のキャメロン首相の3人。日本からは菅直人前首相がパネルメンバーとして参加している。