「津波が来る!」
ソロモン沖で2013年2月6日、マグニチュード8の巨大地震が起きた。この地震で、青年海外協力隊員として私が暮らすトンガのリフカ島でも津波注意報が発令された。私は急いで、配属先のハーパイ州知事事務所のトンガ人の同僚らに津波の怖さを説いて回った。「海岸には絶対に行かないで。万一に備えよう」。ところがトンガ人たちは、私の心配を笑い飛ばした。
情報をもっと収集しようと、私はインターネットで検索し始めた。ふと横を見ると、同僚が真剣な顔でパソコンに向かっている。何をしているのだろう、と覗き込んだところ、津波とは無関係の新しい写真を自らのフェイスブック(FB)にアップロードしていた。私は、トンガ人の防災意識の低さに愕然とした。
津波注意報は幸い、リフカ島では津波到達時刻の前に解除された。考えてみれば、この島では地震の揺れを感じなかったし、この地で生まれ育ったトンガ人のほうがリフカ島の状況を私よりよく知っている。津波が来るかもしれないという実感がわかないのも無理はない話だ。
だがそれでも、東日本大震災を経験した日本人としては、津波に対して敏感になってしまう。そもそも協力隊の私のミッションは防災活動だ(職種は村落開発普及員)。トンガに赴任してから半年、小学校を中心に啓蒙活動を行ってきた。
リフカ島は、端から端まで歩いて1時間半の小さな島。一番高い場所でも標高は10メートルしかない。大きな津波が来れば、飲み込まれてしまう。島の周辺を多くのサンゴが取り囲んでいるため、大型の津波は来ないといわれるが、「想定外」はいつ起こるかわからないし、サンゴ礁の破壊という環境問題もある。
日本の外務省の発表によると、ソロモンでは死者10人、被災者2434人。600戸の家屋が被害を受けたという。
今回の出来事は、私にとって、自然災害の存在を忘れてはいけないと自分の心に刻むと同時に、1年半ある残りの任期で子どもから大人まで、多くのトンガ人の防災意識を高めていきたいと思った。(トンガ=堀田貴子)