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青年海外協力隊の2年の任期を終え、私はこの1月、エジプトから日本に帰国しました。この連載の最終回は、エジプトでの2年間で一番疑問に思っていたことについて書きます。それは女性にとって働きやすいのは日本なのか、それともエジプトなのかという「問い」です。
私の配属先だったエジプト社会連帯省ハルガダ支局の同僚たちは公務員です。そのためもあってか、「子どもの体調が悪いから」という理由で有給休暇をいきなり何日も取る女性の同僚がいて、私は最初、とても驚きました。それだけでなく、「子どものテストが来週始まるから(勉強を教える)」と1週間休む女性の多いこと。男性の上司も「それなら仕方がない」とその行為に納得していました。
エジプトの公務員の休暇制度に興味がわいて、私は調べてみました。すると、意外なことに、エジプトでも有休とは別に、「出産休暇」や「育児休暇」があったのです。第3子までは、子ども1人につきそれぞれ3カ月の休暇を取得することができます。
さらにすごいのは、子どもがいる女性には、子どもの人数にかかわらず、合計6年の休暇(無給)を好きな時期に取得することが認められる制度までありました。使い方は自由で、6年連続で休んでもいいですし、1年ずつ取得しても構いません。
エジプトではなぜここまで、女性が働き続けられる環境が整っているのでしょうか。いろんな見方がありますが、開発業界で働く私の知人のひとり(日本人女性)いわく、「途上国では育児は母親の仕事と決められている。それゆえに制度が整っているのでは」とのこと。確かに、エジプト人男性が育休を取るといった話は一度も聞いたことがありません。
働くエジプト人女性たちを支えるのは「制度」だけではありません。病気にかかった子どもを職場に連れてくるのはざらです。どうしても、病気の子どもを看病してくれる人が見つからない場合、母親は堂々、自分の子どもを職場に連れてきて、面倒を見ながら仕事をします。
同僚たちも「大変ね」と言いながら、順番に子どもをあやします。「困った時はお互い様」という言葉をエジプト人はよく使いますが、助け合いの精神が根付いているのです。
日本のほとんどの会社では、産休や育休を取るのはとても大変です。仮に運良く取得できたとしても、復職後に肩身の狭い思いをしたり、出世に響くとも聞きます。ましてや病気の子どもを会社に連れてくるなんてもってのほか。エジプトとは正反対の環境です。
私は思わず、考え込んでしまいました。先進国の日本と途上国のエジプト、女性にとって働きやすいのはどちらの国なのか、と。エジプトのほうが進んでいる、と私は感じました。
青年海外協力隊での2年間を振り返って、私は多くのことをエジプトで学びました。その1つが女性にとって働き続けやすい職場環境でした。こうした思いを抱きながら、私はいま、日本で就職活動をしています。ちょっと複雑な心境であることは読者の皆さんのご想像通りです。
*この連載はこれで終わりです