開発の主役は「途上国」、南南協力・三角協力の是非を国連フォーラム勉強会で討論

国連開発計画(UNDP)国連南南協力室パートナーシップ・資源動員課の櫻井真美チーフ

「国連フォーラム」主催の第75回勉強会が1月28日、米ニューヨークで開かれた。この勉強会では、国連開発計画(UNDP)国連南南協力室パートナーシップ・資源動員課の櫻井真美チーフを講師に迎え、「南南協力・三角協力とは-開発におけるその役割」のテーマで参加者らは熱い議論を交わした。

国際社会では近年、「南南協力」や「三角協力」が注目を集めている。南南協力とは、途上国同士が主体となって協力しあう援助スキーム。南南協力のひとつで、ドナーや国際機関の支援を受けながら、途上国が他の途上国を支援するやり方を「三角協力」と呼ぶ。いずれも主役はあくまで途上国であり、先進国が途上国を援助するといった従来の二国間の枠組みとは大きく異なるのが特徴だ。

南南協力や三角協力の重要性は、2012年6月にブラジルで開かれた国連持続可能な開発会議(リオ+20)をはじめ、最近では多くの国際会議でも認識され始めている。プロジェクトも年々増えている。

勉強会では、南南協力の推進に長年携わってきた櫻井チーフを中心に、ケーススタディをもとに議論された。主な議論の中身を下に整理した。

■途上国も開発に貢献を

「南南協力特別ユニット」がUNDPに発足したのは1974年。2012年9月に開かれた国連総会での決議を受け、「国連南南協力室」に改称された。

その背景には、南南協力・三角協力を強化したいという途上国側の要望に加えて、南南協力・三角協力のコーディネーターとして国連が、南南協力・三角協力の実施(予定)国や国連諸機関に、南南協力・三角協力について啓蒙、促進、支援提供を目指していくとの意図があると思われる。

経済危機を背景に先進国の政府開発援助(ODA)予算が削減傾向にある中、ミレニアム開発目標(MDGs)を達成するため、途上国自身も開発に貢献するのはもはや必要不可欠。「どの国からも学ぶべき長所がある」との考えから、南南協力・三角協力の経験や適正技術の移転などの重要性はさらに高まるだろう。

■メリットは「援助資源」の拡大

南南協力の主なメリットは、途上国が援助する側に回ることから、援助資源の拡大、域内協力の活性化、途上国のオーナーシップ(当事者意識)増大、適正技術へのアクセス向上、歴史的・文化的バックグランドが似た国同士の協力ならではの援助効率アップ、持続的開発への貢献などが挙げられる。

一方で課題となるのは、南南協力・三角協力に携わる実務者の能力強化・開発をはじめ、MDG+(MDGsのターゲットをさらに進めた目標値のこと)やポストMDG(2015年に目標年を迎えるMDGsの次の開発目標)の中での役割をどう明確化するか、成果主義などのゆるやかな導入をどうすべきか、モニタリングと評価の強化などだ。

■セラード開発から「プロサバンナ」へ

日本は長年、三角協力を重要視し、さまざまな技術支援を供与してきた。

とりわけ、三角協力のモデルとして国際社会から高く評価されているのは「プロサバンナ」プロジェクトだ。これは、日本がかつて供与した、ブラジルのセラードを南半球最大の農業地帯に開発するための技術支援を、そこで適正化された技術を用いて、今度はブラジルが、同じポルトガル語圏で、また気候も類似したモザンビークに広がる熱帯サバンナの農業開発を支援するというもの。日本がブラジルで手がけたプログラムが、ブラジルによってモザンビークで実現されることになったのだ。

勉強会の後は、恒例の懇親会が開かれた。櫻井チーフを囲んだ18人が参加し、アットホームな雰囲気の中、議論の続きが繰り広げられた。(岡本啓史)