イスラエルの中心部ラムラ市のマアシヤフ刑務所(ラムラ刑務所)内で2012年8月から200日以上、ハンガーストライキを続けている人たちがいる。パレスチナ人政治囚のサミール・アル・イサーウィー氏ら4人だ。
イサーウィー氏は、イスラエルとパレスチナが11年に交わした捕虜交換合意で、イスラエル軍高官との交換で釈放されたパレスチナ人政治囚1027人のひとり。ところが、「(パレスチナ自治区の)ヨルダン川西岸地区に立ち入らない」とする釈放条件を破ったとして、イスラエル軍に12年7月、再び逮捕され、ラムラ刑務所に入れられた。イスラエルのエルサレム地方裁判所は2月21日、懲役8カ月の刑をイサーウィー氏に言い渡している。
ハンストの目的は、イスラエル軍による再逮捕・拘留・有罪判決に抗議することだ。
ハンストを続ける4人は、ラムラ刑務所内の病院で栄養補給の注射を打ってもらい、なんとか命をつないでいるという。ただ人権団体によると、4人の健康状態は芳しくない。2月27日深夜にはイサーウィー氏の容体が急変し、現在は病院に搬送され、治療を受けているとの情報もある。
こうした事態を背景に、パレスチナ自治区では、イサーウィー氏らの即時釈放を求める連帯運動が高まってきた。
囚人らを支援するNGO「パレスチナ囚人クラブ」によれば、4人の政治囚と連帯して、イスラエルの刑務所に投獄されているパレスチナ人約800人が2月19日、1日絶食を行った。
パレスチナ人の政治機関であるアラブ最高委員会は2月20日、イスラエル北部のナザレ(キリスト教聖地)のアル・アイン広場にテントを張り、抗議の意を示した。
また2月21日には、約1000人のパレスチナ人が、ヨルダン川西岸地区のベイトゥーニアで、イサーウィー氏らの即時釈放を要求するデモ行進を決行。イスラエルのオフェル刑務所に向かっていたところ、イスラエル軍が発射したゴム被覆金属弾を受け、約20人が負傷した。
さらにエルサレムとヨルダン川西岸地区では2月22日、金曜礼拝と併せてデモが行われたが、イスラエルの治安部隊はガス銃などを発砲。パレスチナ人数十人を負傷させた。
パレスチナ解放機構(PLO)によると、イスラエル当局は1967年の占領以来、裁判抜きの行政拘留も合わせ、子どもや老人、女性を含む延べ80万人のパレスチナ人を恣意的に投獄してきた。もっといえば1967~2011年の44年間で少なくとも70人のパレスチナ人政治囚が拷問で殺されている。
「中東唯一の民主国家」といわれるイスラエル。だがその占領下で暮らすパレスチナ人に対しては「人権」が保障されていないのが現実だ。(パレスチナ自治区=内藤綾也佳)