■新興国の若者の失業がシビア
国際労働機関(ILO)は、年次報告書「世界の雇用情勢2013年版」のなかで、世界の失業者数は2012年に420万人増え、1億9700万人を超えたと指摘した。増加分の4分の1が先進国の、4分の3は、東アジアや南アジア、サブサハラ(サハラ砂漠以南)アフリカなど途上国の労働者。世界の失業者数は10~11年と2年連続して減っていたが、ここにきて再び増加に転じ、13年はさらに増える見込みという。
とりわけ深刻なのは若者の失業者が増えていることだ。15~24歳の若者の失業率は12.6%と、平均の5.9%の2倍以上。世界全体では7400万人の若者が失業中と推計される。失業期間の長さも懸念されていて、先進国では若者の失業者の約35%が半年以上も仕事に就いていない。求職意欲を失い、労働市場から撤退してしまう人も多くなっている。
ILOによると、若者の失業問題は今後、地域格差が出てくる可能性が高い。先進国では向こう5年で状況が少し改善するとみられる一方、東欧や東・東南アジア、中東の新興国ではさらに悪化する見通しだ。
こうした現状についてILOのガイ・ライダー事務局長は「経済見通しの不確実さとこの問題への不十分な対抗策が、『投資』と『採用』を控えさせている。多くの国で労働市場の低迷が長期化している」と分析。また、創出される仕事の多くが、求職者がもたない技能を必要としている「ミスマッチ」の現実にも触れ、職業訓練への支援を強化するよう各国政府に求めている。
■途上国の「中間層」は11億人に
失業者が増える一方で、貧困層の数は減少している。01年と比べ、1日1人当たり1.25ドル未満で暮らす「極度の貧困層」は2億8100万人減の約3億9700万人。同1.25ドル以上2ドル未満の「貧困層」も4億7200万人と、3500万人減った。
これに伴い、2ドル以上4ドル未満で暮らす「貧困層に近い層」は1億4200万人増えて6億6100万人となった。ただこの層の多くは社会保険の適用外であるため、経済危機の影響から、再び貧困に陥るリスクがあるとILOは警鐘を鳴らしている。
1日4ドル超で暮らす「中流層」の労働者は、東アジアを中心に、11億人に達しつつある。細かくみると、4ドル以上13ドル未満で暮らす労働者は倍増。13ドル以上の層も1億8600万人超増えた。17年までに途上国ではさらに3億9000万人が中間層に加わる、とILOは予測する。
中間層の拡大は、世界経済にとって新たな刺激となる可能性がある。ILOは「途上国の中流階級の成長を刺激するには、生産性の水準を高め、良質の仕事を拡充するさらなる取り組みが必要」(報告書の著者のひとりスティーブン・カプソスILO専門官)。
報告書のなかでILOが取り組むべき課題として挙げたのは「民間投資が用心深い間は、公共投資を通じて総需要を支援する調整を図った行動をとること」「訓練や技能再取得プログラムを通じ、労働市場のミスマッチに対応すること」「無職の若者に対して重点行動をとること」の3つ。