正念場迎える「武器貿易条約」の各国交渉、日本のNGO5団体「厳格な規制を」

兵器の移転を規制することを目的に採択を目指す「武器貿易条約」(ATT)の交渉会議が3月18~28日、米ニューヨークの国連本部で開かれる。この交渉を前に、アムネスティ・インターナショナル日本、インターバンド、オックスファム・ジャパン、テラ・ルネッサンス、ネットワーク「地球村」の日本のNGO5団体は3月14日、「抜け穴のないATTを採択することが重要」とする共同声明を発表した。交渉に参加する日本政府への要望は、下の通り。

1)兵器を移転すれば、国際人権法や国際人道法の重大な侵害に使用されることが明白またはその危険が大きいとみられる場合は、兵器を移転しない、とATTに明記すべき

2012年7月に出された草案は、兵器の移転先で、国際人権法や国際人道法の重大な侵害に使用される可能性があっても、「平和と安全に資する」といった理由を付けて兵器を移転することを許す書き方になっている。

また、「戦争犯罪」に兵器が使用されるとわかっていたり、そのリスクが大きい場合も、兵器の移転が自動的に明確に禁止されていないのは問題。戦争犯罪の定義も狭い。

2)弾薬や部品などすべての通常兵器の移転行為を、ATTの規制リストに明確に含めるべき

草案は、弾薬や部品、構成部分を規制リストに含んでいない。輸出についてのみ限定的に規制する形になっているが、銃や完成品の兵器と同じ輸出規制が適用されていないのは問題。移転報告の義務もない。

3)通常兵器の移転先で、女性や子どもへの暴力を遂行または容易にするために使用される重大なリスクがある場合、兵器の移転を許可しないと明確にすべき

4)ATTには、強力な実施メカニズムと、すべての締約国が定期的に包括的な報告書を提出・公開する制度が盛り込まれるべき

5)ATTは、各締約国の移転規制制度で厳格なリスク評価を実施するよう、義務付けるものでなければならない

ATTの議論は06年から国連で始まった。前回(12年7月)の交渉会議では、条約の「コンセンサス」の採択を目指したが、決裂した。多くの国がATTの成立は支持するものの、7月の交渉会議では、米国や中国、ロシア、インドなどの主張に妥協し、“抜け穴の多い草案”が作成された。

ノルウェーやメキシコ、ニュージーランドは厳格な内容のATTを強く推進している。だが英国やオーストラリア、日本、フランスは、米国や中国に妥協する姿勢を見せる。

NGOは03年から、「コントロール・アームズ」キャンペーンを展開。武器の国際移転を厳しく規制するため、厳格な内容のATTの成立を訴え続けてきた。草案のような兵器移転を正当化するような抜け道だらけのATTであれば意味はない、というのがNGOの主張。今回の交渉会議は、草案の抜け道を塞ぐ最大の機会になると働きかける。