3月21日は「国際森林デー」、22日は「世界水の日」。森と水にちなんで、フィリピン・ミンダナオ島の山奥で見つけたサステナブルな光景を紹介したい。
水源(わき水ちょろちょろ)から村まで敷かれていた水道管は、なんと竹だった。日本の水道管のように地中は通らない。半分にパカッと割った竹を上向きにし、小さな子どもの背丈ぐらいの位置で木を使って支え、つなげていく。
これは、開発業界でいう「適正技術」のひとつだ。適正技術とは、コミュニティーの環境や文化、社会経済的背景などに配慮したやり方で、サステナブルかどうかを重視し、最先端のテクノロジーをあえて避けるところに特徴がある。
竹の水道管が運ぶ水は、村人みんなのものだ。共同の水場には蛇口はなく、川のように流れっぱなし。私が顔を洗っていると、手を洗う女の子たちが集まってきた。炊事用に水くみにやってきた主婦の姿も。水を入れる容器もまた竹の筒だった。
竹は切ってもすぐ生えてくる。成長のスピードは驚異的で、1日数十センチから1メートル以上伸びるという。1~2週間で成竹に育つものもある。だからたくさん伐採しても環境を破壊しない。大きくなるまで時間のかかる木の保護に役立つわけで、まさにサステナブルな素材といえるだろう。
竹は糖分を含んでいる。ということは虫に食われやすく、長持ちはしない。だが竹はそこらじゅうに生えているので、切って取り換えるのも簡単。また煮沸・炭化しておけば、糖分を飛ばし、虫の卵も取り除くことができる。
東南アジアには“竹の文化”が息づいている。タケノコを食べるのはもちろん、柱や床、壁などの建材として、また、かごやざる、水筒などの日常品としても重宝する。笛をはじめとする楽器もあるし、バンブーダンスにも竹の棒は欠かせない。タイなどでは、竹筒にもち米やココナツミルクを入れて焼き、お菓子を作ったりする。
「籐でできないものは竹で、竹でできないものは籐でつくる」。こんな言い方が東南アジアには残っている。
この写真を撮ったのはおよそ20年前。少数民族が暮らしていたこの村の水事情はいま、どうなっているのだろうか。