アフリカの紛争地などで平和構築を支援するNGO「日本紛争予防センター」(JCCP)の瀬谷ルミ子事務局長は3月23日、京都大学アフリカ地域研究資料センター主催の講演会「アフリカの平和構築:現場からの課題と今後の選択肢」で講演した。このなかで、アフリカの治安を改善するには援助に頼らない「自立した成長」を促す仕組みづくりが重要だと強調した。
平和構築の現場で活動すると、紛争の被害者からさまざまな支援を要求されることが少なくない。援助関係者にとってみれば、これにどう対応するかが悩みの種だ。だが瀬谷氏は「『あなたたちのできないこと』しかしない」という立場を明確にすることを心がけているという。紛争被害者が援助依存に陥らず、自らの力で生活を再建できるようにするためだ。
「最初は不満を口にする紛争被害者もいる。だがほとんどの場合、彼らは直に、自分で生活を立て直していく。援助が終わった後、生活再建や経済成長がいかに継続されるかのほうが大事だ」と瀬谷氏は語る。
JCCPが提供する援助のひとつに、若者を対象とした職業訓練がある。たとえば南スーダンはホテルの建設ラッシュで沸いているが、そこで若者やストリートチルドレンに、客室係やレストランの調理補助として働けるようスキルを身につけさせる。
「アフリカの治安が悪い背景には、若者が抱える生活に対する不満や将来への不安がある」(瀬谷氏)。この現状を打破するためにも、職業訓練を通じて、若者を社会の一員として自立させるのが狙いだ。同じコミュニティに職を得た若者がいれば、周りの若者は「働く意味」を実感できる。ひとりの成功例は他の若者の就労意欲を刺激する。
コミュニティの問題を解決するために、若者をカウンセラーとして養成する援助スキームもある。紛争地には心の傷を抱える人が多い。このため新たな犯罪や暴力が起きているのが現状だ。紛争の悲哀を知るコミュニティの若者がカウンセラーとなって、紛争被害者の心をケアする意義は大きい。
瀬谷氏はまた、国際機関の援助の限界についても言及。「国際機関の政策立案のスピードでは紛争地の状況変化に対応できない。ビジネスセクターとの連携が重要だ」と述べた。開発の専門家とビジネスセクターが連携することで、より効率的な経済成長を達成できる。
瀬谷氏はさらに、アフリカを日本が援助する意味について「旧宗主国である欧米や、資源を目的とする中国と違って、中立的な日本はアフリカの人たちから信頼を得ている。信頼のある日本の企業にしかできないこともある。日本企業がアフリカへ進出するためにも、治安の回復、安全の確保は必要だ」と語った。
瀬谷氏は、ルワンダシエラレオネ、アフガニスタン、コートジボワールなどで、国連や外務省、NGOの職員として勤務した経験をもつ。ニューズウィーク日本版(2011年)の「世界が尊敬する日本人25人」やアエラの「日本を立て直す100人」に選ばれている。(鈴木瑞洋)