環境・観光立国めざすミクロネシア連邦、日本からの訪問客を「年間1万5000人に増やしたい」

国際協力機構(JICA)のシニア海外ボランティアとしてミクロネシア連邦資源開発省観光課に勤務した高橋英夫さん

ミクロネシア連邦と日本の国交樹立25周年を記念して、JICA地球ひろばは4月6日、「環境・観光立国を目指すミクロネシア」と題するセミナーを都内で開いた。ミクロネシア連邦資源開発省観光課に、国際協力機構(JICA)のシニア海外ボランティアとして2013年3月まで2年間勤務した高橋英夫さん(写真)は「ミクロネシアの観光は魅力いっぱいだ」と講演した。

日本とミクロネシア連邦の関係は意外だが、経済的にも、また歴史的にも深いという。ミクロネシア連邦は太平洋地域最大の排他的経済水域(EEZ)をもち、そこは世界有数のマグロ・カツオの漁場が広がっている。日本人の食にとって重要な存在だ。

また、1914年から約30年にわたって日本が統治していた歴史もある。そのため今でも日系人が多く住んでいる。現在のマニュエル・モリ大統領も日本人の血を引く。さらに、ジドウシャ(自動車)、デンキ(電気)、ヤキュウ(野球)などの日本語も現地語として残っている。

ミクロネシア連邦は、ダイビングやハイキングが楽しめる豊かな自然環境や遺跡で有名だが、実はそれだけではない。戦死した日本人の遺骨収集から始まったレックダイビング(沈船ダイビング)では、戦時中に海底に沈められた船を見ることが可能だ。「戦争の悲惨さとミクロネシア連邦の現在を知ることができる」と高橋さんは説明する。このほか、ミクロネシア連邦には日本の灯台や日本軍の戦車といった戦跡も残っている。

「ミクロネシア連邦には美しい自然がある。現地の人も親日的で、日本人にとっては観光しやすい国だ」と高橋さん。「日本とのつながりは深いのに、ミクロネシア連邦という国を知らない日本人は多い。まずは、ミクロネシア連邦を知ってほしい」と訴えた。ミクロネシア連邦を訪れる日本人観光客は年間約3000人。3年後には1万5000人に増やすのがミクロネシア政府の目標だ。

ミクロネシア連邦では現在、「GTキャスティングポンペイカップ」といった釣りのイベントや「ポンペイ駅伝大会」などが企画されている。こうしたイベントを通して、ミクロネシア連邦を訪れたことのない日本人が足を運ぶきっかけを作ってもらえれば、と高橋さんは話す。

ミクロネシア連邦は、太平洋の北半球側、赤道の北半球側に沿って点在する607の島々で構成される。ヤップ、チューク、ポンペイ、コスラエの4つの州は、それぞれ異なる言語、習慣、文化をもつ。(高橋亜由美)