世界銀行は4月17日、世界の「最貧困層」(1日1.25ドル未満で暮らす人)の現状をまとめた研究報告「貧困層の分析:貧困層および最貧困層の地理的分布」を発表した。このなかで、世界にはまだ、世界人口の5分の1弱の12億人が最貧困状態にあり、とりわけサブサハラ(サハラ砂漠以南の)アフリカは世界の最貧困層の3分の1以上が集中している、と貧困の実態を強調した。
貧困との戦いは確かに、大きな成果を挙げてきた。ミレニアム開発目標(MDGs)が掲げた「1日1.25ドル未満で生活する人口の割合を半減させる」はすでに達成。1981年は途上国の人口の半分が最貧困層だったが、その比率はいまや21%にまで下がった。
世銀のジム・ヨン・キム総裁は「貧困削減には大きな進展があった。だがそれでもいまだに12億人が極度の貧困状態にあるという事実は、良心に汚点として残っている。国際社会はこの数字を、貧困との戦いを次のレベルに押し上げるための警鐘とみなすべきだ」と話す。こうした考えから世銀は、2030年までに極度の貧困をなくす、という目標を打ち出している。
貧困状況を地域別にみると、ダントツでひどいのはサブサハラアフリカだ。この地域の最貧困率は、81年51%、99年58%と推移し、10年には48%へと低減した。ただ「率」では少し改善されたものの(それでもおよそ2人に1人の割合)、最貧困層の「数」は4億1400万人と、人口爆発を背景に、30年前の2億500万人から倍増している。世界の最貧困層に同地域が占める割合も、81年の11%からいまや3分1以上に。最貧困層の人口がこの30年で増えたのは世界でサブサハラアフリカのみだ。
サブサハラアフリカに次いで最貧困層の人口が多いのはインドで約4億人。世界の最貧困層のちょうど3分の1に当たる(81年は22%)。中国は1億5600万人。世界の最貧困層に占める割合は13%と、81年の43%から劇的に減らした。
以下、中東・北アフリカ地域1億700万人、東アジア・大洋州地域(中国を除く)9000万人、ラテンアメリカ・カリブ海地域3200万人の順。ラテンアメリカ・カリブ海地域の最貧困率は、90年代最後の20年間は約12%だったが、10年には6%に半減した。
報告によると、最貧困層の平均所得は増加傾向にある。1日1.25ドルの貧困ラインに着実に近づいており、10年時点では1人当たり1日87セント(2005年の購買力平価で)に上昇。81年は74セントだった。
ただ懸念すべきは、最大の貧困地帯であるサブサハラアフリカでは、最貧困層の所得の伸びが見られないこと。81~10年の最貧困層の平均所得は貧困ラインのほぼ半分のレベルで横ばいだ。
報告はまた、10年の時点で、世界の「最貧困層の貧困ギャップ総額」について05年の購買力平価で1690億ドル(約17兆円、現在のレートで換算。世界全体のGDPの0.25%)との試算を出した。最貧困層の貧困ギャップとは、平均的な最貧困層の人が1日1.25ドルの所得に到達するにはあといくら必要かという金額を累計したもの。このギャップ総額は81年には3620億ドル(同36兆円)だったことから、この30年で半分以下に減ったことを意味する。