泥沼化するシリアの紛争、「支援金が圧倒的に足りない」とオックスファム

国際NGOオックスファムは4月30日、報告書「シリア危機―追いつかない支援」を発表し、深刻化するシリアの人道危機を食い止めるため、支援体制を強化するよう国際社会に訴えた。紛争が続くシリアに対して、国際社会はいまだに、解決に向けた協調策を見出していないのが現状だ。

国連やNGOがシリアを支援する際に大きな壁として立ちはだかっているのが「圧倒的な資金不足」と「シリア国内へのアクセスの難しさ」だ。オックスファムは、シリア政府と反政府統一組織「シリア国民連合」の両陣営に対して国際社会は、国連やNGOがシリア国内で支援活動できるよう働きかける必要がある、と強調する。

2013年1月にクウェートで開かれた「シリア人道支援会合」で、国際社会は、13年上期の支援額として15億ドル(約1470億円)の供与を約束した。ところがオックスファムによると、実際の拠出額はその52%にとどまっているという。

この会合で日本政府は約6500万ドル(約64億円)の追加支援を検討していると表明し、その翌月、12年度補正予算に5875万ドル(約58億円)を計上した。「誓約を履行する日本政府の誠実な対応は、重要な支援資金となっている」とオックスファムは歓迎する。

ただ問題は、シリアの状況が当時の予測を大きく超え、悪化の一途をたどっていることだ。活動資金がもっと集まらなければ、支援活動を中止または縮小する団体が出てくる、と国連は警鐘を鳴らす。国連は近く、下期に向けた資金要請を国際社会に向けて再び発出する予定だ。

オックスファムはこれまで、ヨルダンのザータリ難民キャンプで、トイレやシャワーの設置など、2万人を超える難民へ支援を届けてきた。向こう1年で、シリア国内にとどまる避難民も含め65万人を対象に支援を拡大したい意向だが、そのために必要な資金は3100万ドル(約30億円)。世界各地で目下、緊急募金を呼びかけているところだ。

こうした情勢を受け、オックスファムは、日本政府に対して「13年下期以降のために追加資金を拠出すること」「人道支援団体のシリア国内へのアクセスを確保するよう、他国と強調して紛争当時者に働きかけること」の2つを求めている。

シリア国内では約680万人が人道支援を必要としている。このうち400万人以上が避難民。食料や水、教育、医療などへのアクセスは困難になる一方だが、支援を届けるルートはとりわけ2月以降、狭まっている。

近隣諸国へ逃れたシリア難民は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、4月29日時点で非登録の難民も含めて約140万人。国連は1月、難民の数は6月までに110万人に達すると予測したが、その数はすでに超えた。シリア難民を大量に受け入れたヨルダンやレバノンでは、負担が急激に増したことから経済・社会的な影響が出始めるなど、シリアの問題は隣国でも大きな懸案事項となっている。