12億人が電力アクセスをもたない、世界人口の6人に1人

世界銀行などの国連機関は5月29日、途上国のエネルギー事情についての報告書を発表し、このなかで、世界で電力へのアクセスをもたない人口は約12億人に上ることを明らかにした。これは、インドの人口とほぼ同数。電力アクセスをもたない人の80%が農村や漁村などの在住者で、また約3分の2がアジアとアフリカに集中している。

報告書によると、1990~2010年の20年間で世界では17億人が電力アクセスを新たに得た。インドでは1990年以降、年平均で2400万人に電気を引き、中国も世界最速のペースで再生可能エネルギーを拡大させている。

ただ同じ期間に増えた世界人口は16億人に上る。これは単純計算する限り、電力アクセスをもたない人が20年間で劇的に減ったわけではないことを示す。世界ではいまだに28億人が、薪などのバイオマスを使って料理したり、家を暖めている。

国連の潘基文(パンキムン)事務総長は2011年、「すべての人に持続可能なエネルギーを」という銘打ったイニシアティブを立ち上げた。これは、各国政府、民間企業、NGOが世界的に連帯して、2030年までに「地球上のすべての人に電力アクセスを実現すること(ユニバーサルアクセス)」「再生可能エネルギーを2倍にすること」「エネルギー効率を2倍にすること」の3つの目標達成を目指すものだ。

報告書によると、「すべての人に持続可能なエネルギー を」に焦点に当てた世界のエネルギー投資は年間4090億ドル(約41兆円)だという。この現状について世界銀行などはこのペースでは電力アクセスの拡大は難しいと考えており、2030年までに投資額を最低でも年間6000億ドル(約61兆円)増やすよう国際社会に呼びかけている。6000億ドルの内訳は、エネルギー効率の向上に3940億ドル(約40兆円)、再生可能エネルギーに1740億ドル(約18兆円)などだ。

世銀のレイチェル・カイト副総裁は「(途上国では)電力需要の伸びは、供給力の伸びを上回っている。電気は手ごろな料金でなければならないし、持続可能なやり方で発電し、より効率的である必要がある」と話す。