国際NGOのオックスファムは5月31日、6月1日に横浜市で開幕する第5回アフリカ開発会議(TICAD V)を前に、「経済成長は必ずしも貧困を削減しない。海外からの民間投資や官民連携に偏重した取り組みはむしろ、貧困と格差を悪化させかねない」と懸念する声明を発表した。
TICAD Vでは、経済成長はさまざまな「機会」をもたらすとして、貿易と民間投資を拡大するための環境整備や官民連携の推進を中心とした行動計画の合意に向けた準備が進んでいる。オックスファムの声明は、これに異議を唱えるものだ。
オックスファムが問題視する例のひとつが、アフリカで相次ぐ大規模な農業投資だ。こうしたケースでは、もともと住んでいた小規模農家から生活の糧である土地を奪うこともざらにある。
アフリカでは、農民の8割は、2ヘクタール未満の畑で栽培する小規模農家。飢餓に苦しむ農民も多い。ところがこうした小規模農家の権利やニーズ・課題に配慮せず、農業の大規模化を通じた作物の増産と海外輸出が優先されているのが実態だ。
オックスファムによると、2008年に世界を襲った食料価格の高騰を機に、農業投資は、農民の土地の権利に対するガバナンスが弱い国に集中しているという。
「こうした投資で実現する国内総生産(GDP)の成長は『開発』とはいえない。『収奪』だ。TICAD Vでは、土地収奪を誘発する農業投資を明確に拒絶し、アフリカ農業の主役である小規模農家の主体性を尊重した支援を大きく打ち出すべき」(オックスファム)
とりわけアフリカでは、GDPが成長して「中所得国」に分類されるようになったが、最貧層の暮らしはほとんど改善されていない国も少なくない。これは、国単位の経済指標が良くなっても、土地収奪の問題に代表されるように、経済の発展プロセスから脆弱層を排除する差別構造がある限り、経済成長の貧困削減効果は限定的ということを意味する。国内の格差はますます広がるばかりだ。
インクルーシブな開発を働きかけるオックスファムは、そのために必要な取り組みとして「貧困層の権利を保障する制度を構築すること」「開発政策へ市民社会を参画させること」「自然資源を公平に配分すること」「累進的な租税強化、国際支援による富の再分配、教育や医療などの公共サービスを拡充すること」――の4つを挙げている。
2015年に達成期限が切れるミレニアム開発目標(MDGs)。ポストMDGsを策定するうえで、開発課題を直視した大胆な中身を提示できるかどうかはTICAD Vが重要な役割を担う。