【日本アフリカ学会レポート②】ザンビアの土地収奪には「伝統的権威」も加担している、大山修一・京大准教授が指摘

東大で開かれた日本アフリカ学会第50回学術大会

日本アフリカ学会第50回学術大会で5月26日、「土地をめぐる紛争と伝統的権威」と題するフォーラムが東京大学駒場キャンパスで開催された。アフリカでは、輸出向けの農作物やバイオ燃料作物などのプランテーションを経営する企業が地元民から農地を奪い取る「土地収奪」が社会問題となっているが、このフォーラムでは、ザンビア、ジンバブエ、ケニア、ウガンダの4カ国の事例報告があった。

ザンビアについて発表した京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科の大山修一准教授は、土地問題の本質について「『法律の二重性』という複雑さがある」と指摘する。法律の二重性とは、伝統的に共同で保有されてきた「慣習地」と個人が所有する「私有地」という相反する2つの制度が混在していることだ。

ザンビアでは1995年、新しい土地法が制定された。この法律の肝は、慣習地を個人の所有地にもなりうると認めていること。ただ土地の所有権を個人に与えるかどうかは、それぞれの民族の伝統的権威(宗教的リーダーやコミュニティのリーダーなど)に委ねるとしている。

ところがこの法律は結果として、小農から土地を奪う形となった。

大山准教授によると、新法の施行を受け、北部のベンバでは、伝統的権威が、住民の一部に土地の保有を許可し始めた。その際に優遇されたのは、伝統的権威の縁故者だったり、貢物を献上したりした人たちだった。

また、住民の同意を得ずに、外部の人間に慣習地を売り、私腹を肥やす伝統的権威も現れた。これは、コミュニティが利用できる土地が減ったことを意味する。

ザンビアなどで伝統的に営まれる焼畑農業は、ローテーションで森を焼き、畑を作るため、森林の回復を待つ休閑地を含め、広大な土地を必要とする。だが慣習地の面積が小さくなったことから、土地を休ませる期間が短縮。土地は痩せていき、焼畑農業の生産性は下がったという。

焼畑農業で生計を立ててきた農民はこのため、食料不足に陥った。大山准教授は「(プランテーション企業だけでなく)伝統的権威も、ザンビアでは土地紛争を引き起こすケースがある。また、伝統的権威の世代交代で状況が改善することもある。ザンビアの土地問題は、伝統的権威の資質に大きく左右されるのが現状だ」と強調した。

日本の一般メディアは、アフリカの武力紛争やテロリズムは取り上げても、土地収奪に対してはほぼ無関心だ。ただ事態はかなり深刻。アフリカは、人口増加率2%以上で人口爆発が起きているうえに、人口のおよそ8割は農民だ。土地は慢性的に不足している。これに追い打ちをかけるのが、世界的な資源・食料価格の高騰を背景にした、欧米諸国をはじめ、中国やインド、韓国、ブラジルなどの外資企業による土地の収奪。多くの場合、企業はアフリカの地方政府の役人と結託している。