青年海外協力隊は「黒子」であるべきか、ボランティアの役割を考える

青年海外協力隊員としてパナマに派遣された小林由香里さん

JICA地球ひろばは6月20日、第5回国際協力リレーセミナー「協力隊の先輩たちに聞く!!途上国現場の壁をどうのりこえるか?-パナマ先住民自治区に暮らす女性グループとの民芸品開発を通して-」を開催した。講師は小林由香里さん。横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院の藤掛洋子教授がファシリテータを務めた。

小林さんは青年海外協力隊員としてパナマに派遣され、ノベブグレ先住民自治区でイレネ・バスケス協同組合と一緒になって民芸品を開発した。「パナマシティには高層ビルが建ち並ぶが、ノベブグレは教育や医療、栄養失調の問題が深刻だった」と小林さんは話す。

拠点となる町から自治区へは、車でも進みにくいぬかるんだ道を通らなければならなかった。そのため学校の先生が学校に来ないのもざら。だが先生が来ないことを知る手段もない。また、電波がないため医者や救急車を呼ぶことすらできないほどの僻地だった。

小林さんが自治区に通い始めたころ、協同組合の人たちは、民族衣装のナグアを取り入れた民芸品を製作・販売していた。「でも認知度はゼロ。たくさんの問題を抱えていたから、私に何かできることはないだろうかと思い、組合の人たちと一緒に民芸品を開発しようと考えた」

そのひとつが、民族衣装を着せたテディベアの製作・販売だ。このアイデアはヒットし、メディアにも少しずつ取り上げられるようになっていく。「組合の人たちは自然に積極的になっていった」と小林さん。それでも、すべてが順調に進んだわけではなかったという。

腹が立ったのは、地元の人が時間や約束を守らなかったり、失敗を認めなかった時だ。だが小林さんは徐々に「途上国の人はだらしがない、という先入観を自分が勝手にもち、自分の価値観を押し付けていた」ことに気付いていく。その後、相手が理解してくれるような言い方で説明するようになり、「パナマの文化を尊重できるようになった」。

「青年海外協力隊は任地での活動で『黒子』になるべき。地元の人をサポートする役割に徹するべきだ」という意見もある。これについて小林さんは「私は、自分ができることは積極的にしたほうが良いと思って活動していた。現地の人のニーズを考える必要はもちろんあるが、協力隊はプランナーとして介入できるのでは」と語る。

藤掛教授は「国際協力の有効な介入方法の研究事例としてとらえる場合、ボランティアとしての熱い思いだけでは、主観的な考えになってしまう。客観的、科学的な分析が必要。協力隊として活動するのであれば、現地の社会への介入とは何かを意識し、行き過ぎたことをしていないかどうかを常に考えてほしい」と指摘した。

大洋州では「ビックマン」というリーダーの役割がある。外部から来た人間がリーダーシップをとることでしか社会は機能しないという構造をもつ地域も存在する。だがその一方で、外部者の介入で衝突が起こる場合もある。それぞれの社会が多様であるように、協力隊の役割・活動も正解はなく、かかわり方は多様といえそうだ。(渡辺美乃里)